採用において企業の採用担当者は、面接冒頭の自己紹介によって合否の方向性を決めます。本記事では転職面接の中で重要な割合を占める「自己紹介」を乗り切るコツを、元企業人事の責任者が隅々までお教えします。
※ 面接対策まとめは
「【元人事責任者が教えます!】面接対策―質問・回答集から学ぶ極意―」
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自己紹介では、伝えるべき内容そのものも重要ですが、その後、20〜60分程度の会話の糸口になることを意識することが成功のポイントです。
面接では場が盛り上がると、通過率がグッとアップする傾向があります。そのため、面接冒頭の自己紹介では**「盛り上げ」**を意識すると効果的です。
ネタの作り方ですが、もちろん面接の場であるため、冒頭の自己紹介も仕事に関わる事実からスタートしましょう。
採用担当者は、自己紹介に2つのポイントを期待しています。
それは、あなたの**「職務経歴」と「行動理由」**。
「職務経歴」は文字通り、これまであなたが仕事としてどんなことをやってきたか。
「行動理由」は、あなたの職務経歴における入社・退職のほか、主な職務における節目節目であなたがどう考え、どう判断してその行動に至ったかの理由です。
これらをテーマとして、会話が膨らむように特徴的な体験や事例を話すことがポイントです。
必ずしも成功体験にこだわる必要はなく、前向きな人柄が伝わるのであれば失敗談も積極的に採り上げることをおすすめします。
では、これらを人事がどう見ているのか。
採用担当者は、あなたの志向性を見ようとしています。
志向性を把握することで、「うちの会社に合うかどうか」を見定めようとしているからです。
企業側は当然、自社に合った人材を求めます。
企業と応募者とのマッチング度合いの見極めが転職面接の目的であって、「自己紹介」を通じてその判断の大半がなされている、と考えてください。
これは自己紹介で話された内容にとどまらず、あなたの身振り手振りや顔の表情、声のトーンといったノンバーバル(非言語)コミュニケーションでも印象形成されます。(印象形成については 「転職面接はこれで完璧!基本的な日程調整やマナー・服装とは」 で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。)
面接の合否は”企業側に何を伝えるか(話の内容)”と”どう伝えるか(伝え方)”にかかっているのです。
そのため、成功につけ、失敗につけ、テンションを上げて話せる話題選びがポイントになります。
地道に頑張ってきた話も必要ではありますが、それだけだとどうしても印象が平板になってしまうので、記憶の中で鮮明に残っている体験を1つは採り上げることをおすすめします。
なお、この「キャラクターと志向性」を伝える自己紹介の重要性は、役員面接⇒最終面接と進むにつれどんどん高まります。役員や社長が面接の場で細かいスキル面に触れる話をすることはほぼなく、人物面を重視する傾向にあるので、大詰めの場面に備えるためにも自己紹介はしっかり事前に準備しましょう。
1-1. 自己紹介の理想的な回答例とは
自己紹介の所要時間は1分から2分、長くても3分以内に。
面接の最初からすべてを伝えるのではないことに注意してください。
簡素過ぎても採用担当者に伝わりませんが、長すぎれば冗長な印象を与え、最悪途中で打ち切られることもあります。
ニュースの読み上げスピードが1分間で300字程度であることを参考にすると、事前に原稿を300〜600字程度でまとめておくと良いでしょう。Twitter換算では4ツイート程度しかないのです。
短い時間で話すためのポイントは無理に結論を出したり、きれいにまとめようとせず、興味をひける話題を提示することを心がけることです。
採用担当者からの質問をうまくひきだせた方が、会話のキャッチボールがスムーズになります。多くの場合、質問→回答の回数が増える方が通過率が上がる傾向があります。
また、これは面接の緊張を抑える方法としても非常に有効です。
自分の設定した話題に質問をしてもらう方が答えやすく、その応募者ならではの話題の方が採用担当者としても前向きに聞けるため、緊張の大敵となるブツブツと途切れた会話を避けやすいのです。
自分の緊張感そのものを直接コントロールすることは難しいのですが、「何を話すか」というテーマ設定は事前に準備できます。
序盤だからこそ、このような会話コントロールが重要になるのです。
なお、自己紹介は所要時間こそ短いですが、この1~2分で採用担当者に与える自分の印象が決まってしまいます。
面接では印象形成がとても大事になりますので、**[「転職面接はこれで完璧!基本的な日程調整やマナー・服装とは」][6]**も参考に気合を入れて臨みましょう。
自己紹介は以下の構成でまとめるのが理想的な流れです。
① 挨拶
当然、元気よく笑顔で挨拶をしてから始めることも大事なポイントです。
表現方法に決まりはなく、採用担当者の目を見て力まず挨拶できれば十分です。
緊張しがちな人も多いですが、挨拶のポイントは事前のウォームアップです。
面接30分前に、直接会うかまたは電話で誰かと話しておくことがスムーズな会話入りに役立ちます。
② 氏名
フルネームで名前を告げます。在職中の場合でも社名は言いません。
なお、学歴や趣味も不要です。
③ 職務経歴
これまでに在籍した全ての会社について、会社名、入社理由(志望動機)、職務内容、退職理由をリンクさせながら話します。
ただし、冒頭でお伝えしたように1~2分が目安です。経験社数が多い人は会社名とおおまかな業務内容のみに留めて、注目してもらいたい企業にだけスポットライトを当てると上手くまとまります。
④ 直近の会社での成果・実績、仕事に対する考え方・取り組み方
このとき、直近の会社については詳細な職務内容やその職務における経験・実績・成果などのトピックスと、トピックスの背景にある、あなたの仕事に対する考え方や取り組み方をあわせて重点的に話します。
仕事への考え方・取り組み方は自己PRの場面でも使いますが、マッチングを図るに当たって最重要ポイントの一つにもなるため自己紹介の中でもきちんと触れておきましょう。
なお、自己紹介の終わり方は、「なぜここにいるのか」を伝えて締めくくると良いでしょう。「これからはこんなことに取り組みたくて志望しました。本日は宜しくお願いします。」などの簡単な締めのひとことがあれば大丈夫です。
【詳しい組み立て方は 「2.自己紹介は“ストーリー作り”が命!」 へ】
この構成に沿って作成した自己紹介は、例えば以下のような感じです。
大学卒業⇒電子部品メーカー(4年)⇒電子部品専門商社(5年)という経歴の山田太郎さん(仮名、31歳)の事例として参考にしてみてください。
本日はよろしくお願いいたします。山田太郎と申します。
大学で学んでいた電子工学の知識を活かすべく、新卒で国内電子部品メーカーのA社に入社しました。
国内自動車メーカーと国内電化製品メーカー向けに4年間営業として勤務しました。お客様を回っていた時に幅広い要望をいただいたてもA社では設備などの問題もあり手を広げられないということで、私としてはもっと幅広くサポートしたいと思い、 専門商社のB社に転職しました。
前職と同じく自動車メーカーと電化製品メーカー向けに電化製品全般の営業を2年行いました。
1年目は、商品点数の多さに驚きましたが、商品と顧客の知識を入れながら、周囲のサポートもあって予算達成することが出来ました。
2年目は慣れてきたこともあり積極的に新規顧客の開拓を行い、1年目は95%が既存顧客でしたが2年目は個人売上の60%既存顧客、40%新規顧客をすることができ、予算も150%達成することができました。3年目からはバイイングの事業部に異動し、3年間バイイング業務に従事しました。
1年目は既存取引先との関係構築、2年目は顧客からのニーズに基づく取引先の拡大を、3年目には事業の先を見据え、これまでの取引先にとどまらず率先して必要となりそうな部品や先進的技術を取り入れた部品を作っている企業の開拓を行いました。
具体的には、全体で150社だった取引先を200社まで増やすことができ、そのうち半分の25社を自ら開拓をしました。しかし、市場のこの先を考えると国内だけではなく国外にもマーケットを広げていく必要を感じており、社内でも提言しましたが現職は国外に手を広げていく考えがないということだったため、今は取引先を海外にも広げている、もしくは広げようとしている企業の営業職やバイイング職で探しております。
本日はよろしくお願いいたします。
この例を見ると、自分の過去の経歴を簡単に語った上で自分が直近の職場で成し遂げたこと、重点的に取り組んだこと、そのときの考え方や行動理由を語ることで、自分の特徴を表しているのがわかるでしょうか。
みなさんにはぜひこんな風に、採用担当者にも納得させる自己紹介を作っていただきたいと思います。
1-2. 自己紹介とは似て非なるもの――自己PR・志望動機とはここが違う
「自己紹介を」といわれたときに何を話せばいいのかわからない・・・
その不安を抱かれる原因のひとつとして、「自己PR」「志望動機」との混同があります。
自己PRについて詳しく知りたい人はコチラ を参考にしてください。
「自己紹介」と「自己PR」「志望動機」は似て非なるもの。
自己紹介が自分の経歴を語るものなら、自己PRはアピールしたいスキルや人物特性、強みなど通じて貢献できることを、志望動機は自身のやりたいこと、目指すべき方向性を通じて応募している企業で何を手に入れたいかをメインに語るものです。
自己PR、志望動機に特有なのは、「will(やりたいこと)、can(できること)、must(やらなければならないこと)」の3つの輪で組み立てられること。
「will、can、must」はキャリアについて考えるにあたって一般的に使用されているフレームワークで、その原論はエドガー・シャイン氏の提唱した「キャリア・アンカー」の概念にあるものです。
自己紹介は「盛り上げ」が大事とお伝えしましたが、もう1つだけ使い方のポイントがあり**「種まき」「線路引き」**です。
蒔く種の重要な1つに「自己PRへの導線」があります。
自己PRを話す時に盛り上がれるように、面接冒頭で簡潔な内容で種をまくのが自己紹介です。
2.自己紹介は“ストーリー作り”が命!
さて、ここからは具体的に、自己紹介の組み立て方についてレクチャーしていきます。
その前にまず、大前提として自己紹介は「ストーリー作り」が命です。
職務経歴がそれぞれリンクし、その上で現在の自分や自分のスキル・能力があるのですから、何がどうして今に至ったのか、ということを常に意識してストーリーを組み立てるようにしましょう。
2-1. 転職時の退職理由と志望動機に一貫性を持たせるべし
まず、退職理由と志望動機には一貫性があることが必要です。
つまり、ある会社を辞めた理由と、次の会社を選んだ理由がリンクしていなければならず、全体的にその「流れ」が見えなければいけないということです。
ただ、これは多少理想論でもあります。
本当にしっかり練られたキャリアプランがあって、それに沿って転職しているような場合は簡単に一貫性をもって語れると思いますが、誰もがそうではないですよね。
ただ、これまでに在籍した会社にはそれぞれ、「入社しよう」と思った理由と「辞めよう」と思った理由がいくつかあるはずです。何だったか思い返してみましょう。
その上で「退職→次の会社に入社」の流れに一貫性を持たせることを意識して組み立てることが必要です。
極端な例ではありますが、
退職理由:自己の成長を求めて入社した前職では成長しきったと思っている。
もっと成長したいから退職した。
志望動機:事業に将来性を感じ、安定して働けそうだと思ったから。
などは話に一貫性がなく、ダメな例です。
「自分がもっと成長したい」ことと「事業の将来性や安定」は直接リンクしないからです。
では、これならどうでしょう。
退職理由:自己の成長を求めて入社した前職では成長しきったと思っている。
もっと成長したいから退職した。
志望動機:ベンチャー企業で若くてもある程度の裁量を持って働ける環境であり、
ここなら自己の成長を加速できると思ったから。
こちらは、退職理由が次の志望動機に直結していて「流れ」が見えるので良い例です。
なお、実際のところは、そううまくいかないケースも多いと思います。
例えば人間関係がうまくいかずに退職した場合など、前職の退職理由は「人間関係」ですが、次の会社に「人間関係がうまくいくに違いないから」という理由で入社する人はいないのではないでしょうか。
その場合は、次の会社の志望動機を前提に考えて、「人間関係」という退職理由をうまく転換するとうまくいくことが多いです。
また、何を転換してもどうしてもうまくつながらない、というような場合でも、全体の流れを通じて本人の「成長軸」が見えればきれいにリンクしていなくても大丈夫なケースもあります。
個別の志望動機と退職理由に「一貫性」を持たせることが難しければ、成長の「流れ」を意識して組み立ててみましょう。
なお、志望動機については 「実は簡単!面接での志望動機の伝え方3つのポイント」 で詳しく解説しています。
2-2. 「トピックス」は「強み」を意識して選ぶべし
先ほど、自己紹介と自己PRの違いでも触れましたが、転職面接における自己紹介では自分の強みや弱み、持っているスキルや将来への抱負などを直接述べることはありません。
新卒の就職活動でよくある「私の強みは・・・」「御社に入社した暁にはこの強みを活かし・・・」といった直接的な表現はしないのです。
その代わり、職務経歴の中の「トピックス」を通じて間接的に伝える必要はあります。
そのためにも、語るトピックスを選ぶにあたっては
・自分の強みや長所が伝わりやすいもの
・次の会社でも活かせそうな実績や成果
を中心に組み立てましょう。
でも、「強み」と言われてもなんだかよくわからない・・・
そんな方もご安心ください。
一般的に「強み」として評価される要素の例をいくつか挙げておきますので、この中から自分に当てはまるものを探してトピックスを選ぶのに使ってみてください。
自己紹介は、転職面接の“ストーリー作り”の一部です。
自分の強みを伝えるために、応募先企業に対する志望動機や抱負が伝わるように、これらとの相関関係が高いトピックスを選ぶのです。
具体的な方法は次項でも解説しますのでご覧ください。
2-3. アピールすべき強みはこれだ!未経験でも安心の「正解」解説
では、具体的にどんな強みが企業に求められるのでしょうか。
現職(前職)の職務内容や成果が次の会社と関連付けられない、未経験の業種や職種へ応募されるような方は特にお悩みだと思います。
が、ご安心ください。
業種・職種ごとにアピールできる「強み」の正解があります。
応募先の業種や職種に応じてアピールすべき「強み」を知り、自分の経歴からそことつなげられる職務内容や成果を選べばいいのです。
正解はこちら。
IT・・・設計力、プロジェクト管理能力、俯瞰する力
SE・・・ストレス耐性、ロジカル性
アパレル・・・アンテナの高さ
事務(営業事務・医療事務など)・・・協調性、献身性
経理・・・正確性、スピード感、対応力(柔軟性)
看護士・・・献身性、ストレス耐性
いかがでしょうか。
その業種・職種に応募しようとしているからには、自分なりにも何らかの適性を見出していることとも思いますので、全く何もつながらないということはないと思います。
うまく自分の「強み」につなげるストーリーを作ってみてください。
3.元企業人事責任者が不安を一掃!解決方法をこっそり教えます
さて、ここまで自己紹介の組み立て方についてお話ししてきましたが、いかがでしょうか。
いやいや、まだこんな不安があるんだけど・・・
という方、いらっしゃいますよね。
そんな不安もここで拭い去ってしまいましょう。
元企業人事責任者が不安要素をひとつひとつ解決します。
Q. そもそも対人スキルに不安があるんです。 緊張せずに自己紹介できるか心配です・・・。
A. 緊張してしまう場合は、「少し緊張していますが、宜しくお願いします。」と冒頭に伝えてしまいましょう。少し楽になりますし、採用担当者によっては緊張をほぐすための会話に移ってくれるかもしれません。
また、対人スキルについては、テクニックで乗り切れる部分も多分にあります。詳しくは「転職面接はこれで完璧!基本的マナーとよく聞かれる質問・回答60選」をご覧ください。
Q. 転職回数が多いんですが、全部の職歴について話さないとダメですか?
A. 転職回数が多くても途中を省略してはダメです。
履歴書や職務経歴書に書いてあるのにその会社に触れないのは、何かを隠していると思われて不信感を招きますし、どちらにしても聞かれます。
職歴が多いことで一貫したストーリーを作るのが難しければ、企業ごとにどんな軸で働いていたかをグルーピングしてみましょう。仮に流れが途切れたとしても、グルーピングした個々の塊の流れで志向性は伝えることができます。
Q. 職歴に空白期間があるんですが、どうすればいいですか?
**A. **転職回数の話と同様、自分から触れなかった場合は何か都合の悪いことを隠しているのではないかと不信がられますし、どっちにしても聞かれるので包み隠さずに言いましょう。転職活動、親の介護、留学、休んでいたなど、理由も正直に述べます。
Q. ネガティブな退職理由をどう話せばマイナスにならないでしょうか?
**A. **退職理由は総じて、人・金・体力(身体)・時間の要素のどれかがメインになることが多いですがどれに当てはまりますか?
金(もっと稼ぎたい)の場合は成長欲求とつなげれば問題ありませんが、人(人間関係や社風との不一致)の場合は自分がその不一致を改善するためにした努力を話すことが大事です。また、体力や時間(身体がつらくないところ、労働時間がもっと短いところに行きたい)の場合は、それが次の会社選びの軸になっていればそのまま話しても問題ありません。
4.転職の成功はエージェントの活用が一本道
いかがでしょうか。
ここでは例文とともに自己紹介の組み立て方、話し方について解説させていただきましたが、転職面接における自己紹介に対する不安や緊張、払拭されましたか?
転職を決意される理由は個別性が非常に高く、ここではカバーされていない悩みをお持ちも方もまだいらっしゃるかと思いますが、そんな方はぜひ無料相談もご活用ください。
転職エージェントは面接官ではなく、企業人事の目線からあなたの経歴とキャラクターを的確に分析し、アピールすべき内容とアピールの仕方についてもあなたと一緒に考えるアドバイザーとしてご相談に乗ります。
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