営業と一口に言っても様々です。
主に1.対象顧客 2.扱う商材 3.営業手法 3つの軸で分類されます。
今回は、1.対象顧客:BtoB営業とBtoC営業について、違いやポイントについて解説していきます。
BtoB営業とは、対象顧客を法人相手として、法人対法人取引のための営業です。対してBtoC営業は、対象顧客を個人相手とした、法人対個人取引のための営業のことを指します。
B2BやB2Cとも表現されますが、toを英語の2にかけた語呂合わせで、同じ意味です。
ここでは、それぞれの営業スタイルの特徴と共に、営業スタイルにどのような人がマッチするかを解説します。
特に営業に未経験でチャレンジする人や、少し営業をかじった第二新卒の人は必見です。次に選ぶステージを間違えない為にもよく読んでみてください。
また、前もって自分がどのようなタイプなのか客観的な指標を持っているとより理解が深まります。
BtoBの法人営業とBtoCの個人営業の特徴
まずは、それぞれの言葉の意味と営業活動の流れを説明します。
1-1. BtoB営業(法人営業)とは
Business to Businessの略で、法人対法人の取引の意味です。つまりBtoB営業とは、法人相手の営業活動のことです。業界として主に、素材や部品、原材料やITサービス、人材、広告などがあります。
法人営業になりますので、売上を作るまでの大まかな流れは下記イメージです。
↓
アプローチ
↓
アポイントメント
↓
商談×複数回
↓
成約/申し込み
↓
商品・サービスの提供
↓
入金
※スタートが[顧客リスト]の作成になっていますが、場合によっては[マーケティング]が入ってくる場合もあります。
1-2. BtoC営業(個人営業)とは
Business to Consumer(Customer)の略で、法人対個人顧客(消費者)の取引の意味です。つまりBtoC営業とは、個人客(消費者)相手の営業活動のことです。業界として、不動産、金融、車、新聞、小売商品(消費財)の販売をしている企業がメインとなっていますが、近年ではBtoBをメインとしている企業でも、市場拡大のためBtoCへの広げている企業も増えています。
対個人顧客向けの営業なので一概には言えませんが、大枠の売上を作るまでの流れは下記のイメージになります。
↓
アプローチ手法の選択/接点を持つ場の選定
↓
コンタクト
↓
申し込み/予約
↓
入金(手付金の場合もあり)
↓
成約
↓
商品・サービスの提供
1-3. BtoB営業とBtoC営業の比較表
ここまでの概略を整理してみました。表を参照ください。
BtoB | BtoC | |
---|---|---|
対象顧客数 | 業界のみが多い。最大でも全法人数まで | 大多数。近年では世界の人口が対象 |
決裁者 | 複数。見えない(会えない場合も) | 目の前の人、周辺の人 |
単価 | 高め | 低め |
決裁までの時間 | 長い傾向 | 短い傾向 |
交渉の場 | 対面・電話・メールがメイン | 対面からネットへ |
入金と商品・サービスの開始のタイミング | 入金が後 | 入金が前(手付金の場合もある) |
購買プロセスの違いから、大きく6項目で異なることがわかります。
それぞれの違いについて詳しくは次章でご説明します。
2.最大の違いは、決裁者(意思決定者)が誰か
前章の内容をもとにBtoB営業とBtoC営業の違いについて見ていきます。上記の表を見てみるとわかるように、傾向としてほぼ真逆です。
もちろんBtoCでもBtoBに近くなる業界もありますが、あくまで一部です。つまり、同じ“営業”と言っても性質が全く異なるため、人によって適性が異なります。
BtoB営業で成果を出して活躍していた人が、必ずしもBtoC営業で成功するとは言えないということです。逆も然りで、BtoB営業で上手くいかなかったからと言って“営業”に向いていないとは言い切れず、BtoC営業では成功する可能性もあるということです。営業の違いによる成功するためのポイントを見ていきましょう。
2-1. 対象顧客数の桁が違う
BtoB営業において、インフラ系を商材として扱っている企業の場合は、対象顧客が全法人となるため数やエリアも大きくなりますが、それでも国内では250万社くらいです(個人事業主抜き)。かたや素材や部品、原材料などを扱っている企業になると、対象とする業界が限られてしまうため、ターゲットは数百~数千社程度になります。
つまりBtoB営業は、対法人相手にビジネスをするため有限となります。
また、“下請け感”もあるのも特徴です。
そのため、BtoCよりも先に世界基準が求められている業界とも言えます。いかにメイドインジャパンの付加価値を高め、付加価値の提案が出来るかが国内で勝ち抜くポイントにもなり、それは、有限の顧客数しかいない国内に留まらずに、海外に出ていく上でも重要になります。
一方で、BtoC営業は、もちろん扱う商材によりますがどんなに少なくても対象顧客数は1万人を超えてきます。そのため、「マーケティング」が重要視されています。
どんなに小さいお店でも、顧客の誘導から購入に至るまでのハードルをいかに取り除くかが大切になってきます。対象顧客が多いだけに、ただバタバタと走り回っても効果はなく、どのような人たちをターゲットにするかをしっかり決め、ターゲットに対してどのような手を打ち続けるかが大切になります。
対象顧客数のイメージが強すぎる為か、BtoB営業では新規開拓営業が少ない傾向にあるのも特徴です。BtoBでは、継続的な取引が多いため既存ルート営業がメインとなっており、新規開拓まで手が回らなくなってしまうためです。しかし、企業として成長・発展していく上では既存顧客との取引維持(+α)に新規開拓をしていかなければならないことを理解しておく必要があります。
2-2. BtoCは交渉の場がWebに移行
BtoB営業では、国内では今でも対面が重要視されている向きがあります。例外的に、アスクルのように単価が安く、購入する商品・サービスに他と大きく変わりがないものについては、インターネットやカタログといった媒体のみで売買が行われる場合もあります。しかし、少なくとも1回は対面で会って話してからでないと交渉が成立しないことがほとんどです。
バイヤー(買う側・顧客側)の心理として信頼・信用できる相手なのか見定めないと購入することが出来ないという面が最も大きいのですが、実は顧客側だけでなくサプライヤー(売る側)にとっても対面することが重要になっています。
後にも項目として用意しましたが、入金のタイミングが影響しています。サプライヤーも、顧客を選ぶ必要があるためです。
企業の信用調査をする第三者機関から財務情報や企業の近況情報を得ることも可能ですが、サプライヤーとして長く付き合える顧客と成り得るのか、さらにはきちんとお金を払ってくれる企業なのかを自分たちの目で見定める必要があります。この見立てを誤ると黒字倒産となる可能性が出てくるほど重要です。あくまで会社の顔としてお互いに接している訳で、企業間取引となることを念頭に置いておく必要があります。
BtoC営業は、ここ20年で最も売り場が変わった市場と言えます。これまでは店舗や市場、展示場などの顧客との接点を設け、対面で商談をしてきました。約20年前から“女性の社会進出”が加速し始め、通信販売業界が急速に立ち上がり、対面ではなくTVやカタログ、ラジオを媒体とする業界が確立されてきました。2000年代に入り”インターネットの普及”で拡大スピードがさらに加速します。
消費者としては“簡単”“便利”“早い”と三拍子揃っており、サプライヤーとしては購入ルートや他の購買履歴など詳細にわたる顧客データがとりやすく、戦略・戦術を立てやすくなったと言え、相思相愛の関係からインターネット通販が急拡大しています。
一方で、不動産、金融、保険、自動車などの高額商品・サービスを扱っている業界はまだ対面販売がメジャーです。単価が高く、お互いに慎重なステップを踏むためBtoC営業と言っても、これらの業界は他の項目においてもBtoB営業に非常に近いことが特徴です。BtoC営業でも前述の業界は特殊で、特殊BtoC営業と考えてください。
2-3. “決裁者”は最大の違い
タイトルにも上げましたが、決裁者が最も大きな違うポイントです。
BtoB営業では、社長以外の人と商談しても、その人に決裁権がない場合が多々あります。人に権限がない場合と、複数にまたがっている場合があり、“決裁”に対して複雑な工程を経るようになっています。
一方、BtoC営業では商談相手がほとんどの場合決裁権を持っており、別にいるとしても近親者くらいで、赤の他人ということは滅多にありません。どういうことか詳しく見ていきましょう。
企業に属したことがある方は分かると思いますが、企業おいてはポジションによって動かせる“金額”が異なります。何故なら、取引するためのお金は個人のお金ではなくあくまで企業のお金だからです。係長クラスであれば10万円、課長クラスであれば100万円・・・というように、ポジションと金額が紐づけされています。また金額とは別に“役割”もセクションごとに分けられています。例えばメーカーであれば、研究開発、企画マーケティング、購買(生産管理)、品質管理・・・と「部品購入」に関わる部署は複数にまたがります。
つまり組織があるために、個人に対して与えられた“金額”と“役割”があるため、一人で決裁できることは小規模でしかありません。大切な会社のお金を慎重に“決裁”する仕組みとして複数人が関わるようになっているのです。そのため、一人の人を相手にするだけでは成約に結びつかず、常に目の前の人プラス5人くらいのことを想定して提案しなければなりません。
結果的に、決裁をもらうために、それぞれの立場に立って考えられる力と行動力が必要です。影響力の大きいキーマンが誰なのかを見つけることが、BtoB営業において最も重要と言えます。
BtoBビジネスでは、中間業者を挟むケースも多く、さらに複雑化しているのも実情です。問屋相手の場合、問屋の先の企業に届くようにどのような提案方法が必要なのか、3社で会う場をセッティングした方が良いのか・・・など提案内容以外にも考えることが必要です。キーマンを掴むことに注力しましょう。
一方で、BtoC営業では目の前の人もしくは隣の人がほとんどのケースで決裁者です(稀に、離れて住んでいる親が決裁者の場合もありますが)。この点が、BtoC営業のやりやすさです。その代わりに決裁者とお金の持ち主が同一人物であるため、目の前の人に全力を注いで成約に結び付ける手腕が必要です。
BtoBのように“会社のお金”ではない分、同じ金額の場合判断基準は厳しくなりがちです。商材によりますが、多くのBtoC営業では提案型は少なく、決まったスペックで販売する場合が多いため、より多くの顧客と接点を持ち機会を増やすことが大切になります。
2-4. 金額と決裁までの時間は比例する
決裁までの時間は単価に比例しますので、BtoB営業は決裁まで時間がかかる傾向にあり、BtoC営業は決裁まで時間が短い傾向にあります。
BtoB営業でも担当者レベルで決裁できる文具やコピー紙などのオフィス用品は例外的に決裁まで時間もそうかかりません。また、BtoC営業でも特殊BtoC営業と挙げた、不動産、金融、保険、自動車などの高額商品・サービスは別格で、決裁まで時間はかかります。そういった特殊な例を除くと往々にして、決裁に関わる人が多いBtoB営業は成約まで時間がかかり、決裁者が1人か2人くらいのBtoC営業はあまり時間は掛からずに受注がもらえます。
そうかと理解することは難しくないと思いますが、実はこの“決裁までの時間”は営業スタイルと人物適性のマッチングにおいて重要な要素の1つとなっています。Star転職の自己PRレポートでは、キャラクター特性として「ハンター型」と「粘り腰型」の2パターンに分類しています。成約まで時間のかかりやすいBtoB営業は「粘り腰型」が、割と即決して購入が成約するBtoC営業は「ハンター型」が向いていると言えます。
2-5. BtoB営業の肝はお金の回収
一般的に特徴としてあまり挙げらることのない項目ですが、ハッキリと差があり、BtoC営業をやっていた人がBtoB営業に変わった時に最も慣れない感覚がこの「入金管理」です。
BtoC営業の人はお金の回収を意識することは滅多にありません。何故ならお金と商品・サービスの取引が同時(同日)か前金で行われる為です。スーパーでもレストランでもホテルでもサービスの前か直後にお金を支払いますね?昔は「ツケ」があったので、後日に回される場合もありましたが最近ではほとんど見かけません。あくまで目の前で支払いと商品・サービスの交換が行われます。インターネットでも同様で、クレジットカード払いかコンビニ支払い(前払い)がほとんどです。
しかし一方でBtoBの業界では、ほとんどが「後払い」です。月末締めの翌月末支払い(30日サイト)を中心に、長い業界では取引から3ヶ月後の90日サイトということさえあります。これはどういうことなのか。法人間の取引は、まさに「ツケ」と同じ「信用」「信頼」の証による後払いが成立している世界なのです。
この入金管理をすると、BtoB営業はあくまで法人対法人の取引であるということを、最も意識させられる瞬間です。営業活動で大切なのは、成果=売上(利益)を生み出すことですが、それは同時に「きちんとお金をもらうこと」でもあるのです。
生々しい話ですが、成約をとり商品・サービスを提供したら先方が倒産したor不払いを起こした・・・では成果どころか、マイナスでしかないのです。そのため、BtoB営業では、売れる相手かどうかを見極めると同時に「きちんと支払える相手か」も見極める必要があるのです。仮に何十年も続く取引相手だからと言って、自分が担当している企業が不払いを起こしたのであれば、自分の目が節穴だったと認めるしかありません。
その点、BtoC営業はその場でお金をもらうことが大半なので、気を付けるべきはその場で支払えるかどうかです。ただ、銀行やカード会社は個人相手にローンを組むときは、慎重に審査をしています。
3.BtoBの法人営業とBtoCの個人営業 年収の違いのカラクリ
自分の周り以外の年収はあまり知らないかもしれませんが、その裏事情をこっそり説明します。
3-1. 年収は・・・BtoB営業≧BtoC営業
BtoC営業に従事している方、肩を落とさないでください。でも、これが現実です。
もちろん業界によっても異なります。特殊BtoC営業は、年収でも特殊で、成功している人と上手くいっていない人で圧倒的な差がある業界です。BtoC営業でも稼いでいる人は、BtoB営業のトップクラスとも肩を並べる年収1000万円超えをしている人もいます。
何で営業スタイルでそんな差があるのでしょうか?
3-2. 難易度が上がれば上がるほど、高年収に
前章で、BtoB営業とBtoC営業の違いを細かく書きましたが、客観的にはBtoC営業よりもBtoB営業の方が難易度が高いとされています。
営業としての複雑さもありますが、単価の違いの影響力も大きいですね。
当然難易度が高いということは、それが出来る人に対して雇用側としても、高い給料を出してでも働いて欲しいということになります。
ですので、稼ぎたいという人は、BtoB営業か特殊BtoC営業(保険、不動産、金融・証券)を目指すと良いでしょう。
4.BtoB営業とBtoC営業 それぞれに合う人物像とは
さて、細かくBtoB営業とBtoC営業を見てきましたが、違いについてわかりましたか。では、どのような人がどちらの営業に向いているか、それぞれに合う人物像について見ていきましょう。
前章にヒントがありましたね。決裁までの時間がかかりやすいBtoB営業は、じっくりと時間をかけて交渉ができる「粘り腰型」、目の前で成立しやすいBtoC営業は、目の前の顧客に対して力を発揮しやすい「ハンター型」が向いています。
とは言ってもBtoC営業でも特殊BtoC営業の、不動産や保険、自動車といった高額商品の場合は即決するケースは稀で、基本的に何度か会い、信用・信頼を築いて成約することが多い業界です。そのため、これら特殊BtoC営業はBtoB営業と同じく「粘り腰型」が向いています。
また決裁権が複数にまたがるBtoB営業の場合は、複雑な人間関係をストレスに感じにくいことも大切です。商談先の株式会社Aの窓口である鈴木さんが「買いましょう」と言ったからといってもまだ喜べず、その上の役職の高橋さん、さらには株式会社Aの先のB株式会社の社長が納得しないと「購入・成約」にならない・・・そういうことが当たり前の世界です。
BtoCに比べて一人一人は無責任になりがちなので、一人ずつのハードルはBtoCに比べて低いかもしれませんが、最終的なハードル台数は、10台に及ぶことさえあります。そういうことも楽しめるくらいであれば、BtoB営業が向いていると思います。社会を乗り切るにはいずれにしても必要な力ではありますが、「自己肯定感」や「サバイバル力」も高めましょう。
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