年収800万を超え、キャリアアップの機会を広げる転職
20代後半から30代前半のタイミングでは、「転職」もキャリアアップの有力な手段のひとつになります。800万オーバーの年収水準を長期的に獲得するためには、年齢相応のキャリア経験を積んでいることが必要です。
私たちが日々接している活躍人材が打ちあける主な転職理由としては「業界の先行きに限界を感じている」「ポジションが詰まっていて昇進見込みが低い」「業績はあげているものの成長実感がない」などがあります。
これらは業種・業界編で解説したとおり、いずれも業界とその企業の要因が大きいと考えられます。
企業ごとのマネジメント職の総数には制限があり、それはその企業や業界の収益性に強い影響を受けています。相対的に収益性の低い業界では、より上位のマネージャーを異動させない限りポジションがつまりがちな傾向となり、若手がチャレンジする機会が少なくなります。
このような環境では、若手のエースプレーヤーにとっては代わり映えのしない仕事が続くことになり、なんとなく不完全燃焼を感じる状況になります。
また、マネージャークラスになると企業や部門の全体像が見えてくるため、数年後の業界や企業の動向に見通しがついてきます。
そのため、活躍人材が転職する際には、職場への表面的な不満はあまりなく、業界への執着がなくなり新たな活躍の場を求めている、というパターンが多く見られます。
このように考える人はまだまだ少数派ですが、先々の展開を見越してより成長産業に活躍の場を求める、という着眼点はキャリアアップには欠かせない考え方です。
プレーヤーからマネジメント、マネジメントから責任と権限の拡大へ
キャリアアップを主目的とする転職では、よりマネジメント能力を求められる職務でポータブルスキルを磨けるポジションを見つけることが最重要です。
プレーヤーとマネジメントでは必要な能力が異なるため、早めにマネジメントに慣れておくことで経験値を増やしやすくなります。
また、より上位のマネジメントに進むことで責任と権限の幅を広げる挑戦も重要です。責任のある役割を務めてきた人ほど経営者から評価されやすいことは明確で、市場価値が高まります。
このようなポジションを求めるには、ベンチャーや成長中の企業に着目することも有効です。
ベンチャー企業の役員陣のプロフィールを見ると分かりますが、成長企業の幹部は大手企業からの転職組で構成されているケースが非常に多いのです。創業当初は社長と現場のメンバーで立ち上がった組織が、急成長フェーズに入って優秀なミドルマネージャーを中途採用で招くことで組織化を進めるパターンが大半を占めています。企業の成長ペースの方がメンバーの成長スピードよりも早い場合、必ずしも古参メンバーが優遇されるとは限らないのです。
問題は、早すぎる転職から遅すぎる転職へ
このように適切な転職のタイミングとは、自分の能力と社内/社外のポジション機会を総合して判断するものです。
転職タイミングのリスクには「早すぎる転職」と「遅すぎる転職」の2つがあります。従来は「早すぎる転職」が問題とされてきました。転職するよりも現在の職で粘っていた方が機会が大きい、という考え方です。これは、その企業が成長し続けている時代に限って当てはまります。
アメリカもかつて終身雇用制をとっていたことはあまり知られていない事実です。しかし日本メーカーの高度成長によって経済成長が停滞し、今では雇用流動性の高い国になっています。
このような国では各個人のキャリアにとって「遅すぎる転職」が問題となります。適切なタイミングで機会をつかまなければ会社と共倒れになるという意識が浸透しているのです。
日本もまたアジア諸国の成長の影響を受け、低成長時代に入りました。経済のルールが変わった以上、親や先輩の世代とは昇格・昇給のルールも変わらざるを得ません。アメリカの40年あとを追って、キャリア自己責任時代に入ったと見るべきです。
重要なことは、自分の特性を生かして企業を渡り歩く前提で一貫性を確保することです。比較的無難な戦略は、同一または近い職種の中でキャリアアップすることでしょう。
年次が進むにつれてできることを増やしていくためには、経験がゼロリセットになってしまう転職を繰り返すのは危険です。
エージェントの重要性が高まっている
キャリアの問題が難しいのは、情報を十分に得られないことが主要因といえます。
合理的な判断をくだすためには、自分の特性・能力の習得度合・業界の求人需要などを総合的に評価すべきですが、自分ひとりで考えていても、どの要素も主観的な印象しか持つことができないケースが大半と考えられます。
そのため今後のキャリアプランにとって、幅広い観点から相談できる転職エージェントの重要性が高まっていくことは間違いありません。
とくに「遅すぎる転職」の問題はメタボリック症候群のような生活習慣病と同じようなもので、ゆるい生活を送っているだけで進行していく危険性があり、第三者によるヘルスチェックがないと気付きにくいものです。
将来の不安に備えるためには、先手を打ってキャリアを重要テーマとして意識して具体的に行動を起こすことがもっとも有効なのです。
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