- リーダーシップとは何か?
- 個人の強みや環境に着目するリーダーシップ分類
- カテゴリー論の副作用には注意が必要
- リーダーシップとマネジメント
- 持続する力と変革する力
- リーダーシップとマネジメントを必要とするのは誰か?
- ビジネスにもリーダーシップが求められている
- サーバントリーダーシップとは?
- フォロワーシップを醸成するリーダーシップ
- チームの牽引を重視する軍隊式リーダーシップ
- 見通しの悪い環境ほど「正しいことを行う」必要性が高い
- リーダーとしてのスキルアップ法
- 次世代リーダーの確保が難しい理由
- 異質なキャリアパスが次世代リーダーを生み出す
リーダーシップ論は古くから関心を集めてきたテーマです。
現代でこそ優れたリーダーの必要性を明確に意識する機会は少ないかもしれませんが、歴史を振り返れば民族間の競争・戦争が絶えなかった時代は長く、君主の優劣は国民や民族の運命を左右する重要な問題でした。
歴史上のリーダーシップ論としては、帝王学に関する書物が遺っています。マキャヴェッリの「君主論」はよく知られた古典ですし、東洋では「三略」や唐の太宗の言行録「貞観政要」があります。
近代以降、市民社会が定着してからは君主や国王はそれほど重要なテーマではなくなり、リーダーシップ研究の一部は軍隊の育成論や戦争論に組み込まれて受け継がれています。
リーダーシップとは何か?
リーダーシップという用語には厳密に一致する見解はなく、バラつきのある概念となっています。
そのため、しいてリーダーシップの定義を考えるなら、「リーダーが身につけている能力」ということになります。
現在では、主な競争の舞台が軍事的な戦争から経済市場に移ったことから、「組織が継続的に収益を上げていくために必要なリーダーの資質や役割とは何か」を明らかにすることが現代のリーダーシップ論の中心的な課題となっています。
「どのような人物が理想的なリーダーか?」という点を具体化することで、リーダーシップ論のテーマが見えてきます。
多くの本で取り扱われているリーダー像に共通しているポイントとしては、「それまでは誰も支持していなかった思想・アイディア・価値観を広めていること」「多くの人々を牽引することで大きな成果をあげていること」が挙げられます。
たとえば、リンカーン大統領、キング牧師、松下幸之助、マハトマ=ガンジーなど、偉大なリーダーの実例とされている人物にもこれらの点が当てはまります。
リーダーシップの定義をキーワード的にまとめると、ジョン=コッター教授の「変革をみちびく力」という定義が最大公約数な考え方を表していそうです。
コッター教授を含めて、組織を牽引する能力を「リーダーシップ」と「マネジメント能力」に分けて考えるケースが一般的で、両者を対比することで理解しやすくなります。
通説によると、「なすべきことを決める」「正しいことを行う」のがリーダーシップで、「決めたことを実行する」「正しく実行する」のがマネジメント能力とされています。
たとえばドラッカーは「効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである」と述べています(『プロフェッショナルの条件』)。
将来を見通す力や決めごとの側面、たとえば大義や正義、意思決定といったものがリーダーシップのコア概念に含まれます。
個人の強みや環境に着目するリーダーシップ分類
各界のリーダーの個性が多様であることから、リーダーシップにもいくつかのスタイルがあるのではないか、という見方があります。
リーダーシップをカテゴリー特性に分類する研究は、個人の特性に着目するものと、環境に応じて求められる能力に着目するものの2通りに分かれます。
ストレングス・ファインダーで知られるGallup社は、各個人には34の強みがあると主張しており、企業研究にも強みを生かした分析を導入しています。
“Strengths-Based Leadership” (邦題「ストレングス・リーダーシップ」)では34の強みを「実行力」「影響力」「人間関係構築力」「戦略的思考力」の4カテゴリーに再分類し、各人は自分の強みを生かした役割を担うとともに、チームとしては4つの類型の能力をカバーできるようなメンバー構成を組むことを推奨しています。
人的な特性とは逆に、企業の置かれている状況から必要なアプローチを類型化する研究もあります。
戦略コンサルティングの事例分析に基づく「BCG流 経営者はこう育てる」では、企業の成長段階や周辺環境に応じてアプローチは異なると説明します。
対照的な例としては、主に優位性の強化に自らの時間を投じる「競合優位型」に対して、従来のやり方に決別するためのコミュニケーションを徹底する「変革型」があり、その他に「戦略型」「人材型」「フレーム型」などを挙げています。
環境への適応事例として、GEのジャック=ウェルチは戦略型→変革型(前期/後期)→人材型とアプローチを切り替えきた、と分析しています。
それぞれ戦略の策定、変革の指揮、人材開発というようにフェーズに応じた重要課題に対して80%の時間を割いており、経営スタイルを大きく変えたことが成功要因だと指摘します。
カテゴリー論の副作用には注意が必要
リーダーシップのスタイルの違いに関心が集まるのは、より具体的にはコミュニケーション・スタイルの違いへの関心であると考えられます。
変革を具体的に伝える段階で、ソフトな牽引力というコミュニケーションスキルが重要になるため、多彩なスタイルのスキルを身につけることは有効です。
カテゴリー分析は、具体性が高く理解しやすいことがメリットである一方、有効な局面が限定されるという制約をともないます。
リーダーシップは総合力であるという見方も多いため、アカデミックなリーダーシップ論ではカテゴリー分類の手法はそれほど主流とは言えません。
カテゴリーへのフィット感による現状追認に安住しがちであるという副作用には十分注意する必要があります。
リーダーシップとマネジメント
組織を牽引する能力として、リーダーシップとマネジメントという2つの概念が組織論の重要なテーマとなっています。
この2つの違いを簡単にまとめると、マネジメントスキルは”既にあるものを維持する”能力、リーダーシップは”まだ存在しないものを生み出す”能力、ということになります。
典型的な企業の例でいえば、マネジメントは部長・課長・主任に必要な力、リーダーシップは社長・取締役・事業部長に必要な力と考えると分かりやすいかもしれません(経営者の具体的な役割については「 役員・取締役とは? 」を参照してください)。
持続する力と変革する力
マネジメントとリーダーシップの手法の違いを具体的に比較してみます。
まずマネジメントは、よく知られているイメージのとおり、企業の持続性を支える能力です。
組織方針にしたがって日々の役割を分担して運営する役割を持っています。
活動計画/チーム編成/予算統制などの計画的活動を行い、四半期または半期ごとに達成度を評価するPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルはマネジメントの手法です。
多くのビジネスマンがマネジメント計画に組み込まれているため、これらの用語になじみがあるのではないでしょうか。
一方のリーダーシップは、”lead”という言葉が表すように、変革を先導する能力です。
将来を先取りして組織の新たな目標を定め、変革が定着するまでチームを牽引し続けます。
いま存在しないものを見出して具体化する際にはマネジメントのような計画的手法は通用しません。
過去に決別して新たな活動を組織中に浸透させるために、ビジョンの策定/動機形成/抵抗との戦いといったインフォーマルなプロセスが重要となります。
リーダーシップとマネジメントを必要とするのは誰か?
リーダーシップとマネジメントは矛盾する概念ではなく、一人のマネージャーが両方のスキルを身につけることは可能です。
実のところ、それぞれの能力の必要性は環境によります。
変革や適応の必要性が高い市場環境ほどリーダーシップが強く求められますし、逆に安定的な環境ではマネジメント力の勝負になりやすいと考えられます。
このような傾向を理解するには、軍隊のような極端なケースが好例です。
軍隊ではトップ層にとどまらず、チームレベルの末端組織までリーダーシップが明確に意識されています。
これは、戦場では個別の部隊が刻々と変わりゆく差し迫った危機に直面するためです。
また、さまざまな階層のリーダーが負傷や戦死で欠けることが想定され、あらゆるレベルのチームが苛烈な変化の中で組織行動を継続し続けなくてはならないことも要因と言えます。
ビジネスにもリーダーシップが求められている
ビジネスの分野でも、市場環境が変化するサイクルが速まっていることからリーダーシップの必要性は日々高まっています。
歴史作家で元官僚の堺屋太一も繰り返し指摘しているとおり、決められた規格品を大量生産する20世紀の工業社会的な環境であれば計画的なマネジメントの整備が有効でしたが、そのような時代ももう終わっています。
プロセスの変更が増えてくると計画の寿命も短くなります。
ハーバード大のジョン=コッター教授は、ほとんどの企業で変革をリードする人材が圧倒的に不足している現状に警鐘を鳴らし、リーダーシップ育成の必要性を強調しています。
決められたことはテキパキとこなすことができても、みずから率先して動くことのできない中間管理職タイプの人は、マネジメントスキル習得を卒業して意識的にリーダーシップ向上に取り組む必要があるのです。
サーバントリーダーシップとは?
サーバントリーダーシップという独特のリーダーシップ論があります。
ロバート=グリーンリーフが主著「サーバントリーダーシップ」(1977年刊行)で提唱した概念で、”奉仕”倫理の重要性を説いたものです。
グリーンリーフの主張は徹底しています。
他者に奉仕する徳の高い人物をリーダーとして選定すべきであり、また組織はサーバントを育成する場を意識的に採り入れなくてはならないと言います。
サーバントを要所に配する組織のメリットとして、メンバーが主体的にプロセスに参加する効果を想定しています。
サーバントの影響力が波及して、自然発生的に方向付けされ優れたリーダーシップが生み出される、という間接モデルとしての見方が特徴です。
随所に聖書から引用されている通りキリスト教の奉仕精神を色濃く反映しています。
ただ、サーバント活動の最古の教義は仏教の八正道であるとも指摘しているほか孔子の引用もあり、洋の東西を問わない古典的な徳を発掘した概念とも言えます。
サーバントの特徴的な行動特性として、メンバーを受容することや聞くことを挙げ、継続的な傾聴の訓練などによるスキル向上を重視しています。
全体的に宗教色の強い概念ですが、その他のリーダーシップ論であっても対話などのインフォーマルなコミュニケーションの重要性は共通しています。
サーバントリーダーシップ固有の主張は、理想的なコミュニケーションを獲得するために”奉仕”という具体的な方法論を提示している点にあります。
生まれながらのサーバントは優れたリーダーの素質を備えると見ている点や、預言的な力による組織の方向性の探索など、カリスマ論的な要素を素朴に採りいれている点に主張の危うさも残っています。
実証となるケースがほとんど登場せず、コンセプトモデルにとどまる印象が強いもののサーバントリーダーシップは古典的な価値観を継承した組織論として根強い関心を獲得しています。
フォロワーシップを醸成するリーダーシップ
サーバントリーダーに近い研究アプローチとして、心理学の分野にはリーダー側ではなくフォロワーに焦点をあてるリーダーシップ研究があります。
どのようにすれば人を牽引できるか、という一般的な見方と逆に、「なぜその人について行きたくなるのか」という観点でフォロワーシップ現象を分析するものです。
一方、企業競争力をテーマとする経営論の分野にも、フォロワーシップを生み出す要因の議論があります。
メンバーに「この人について行きたい」と思わせる能力を特定することが、経営組織論の関心事となっています。
チームの牽引を重視する軍隊式リーダーシップ
チームを牽引する具体的な方法を追求しているという点では、組織論の中でも軍隊リーダーシップの分野が進んでいます。
軍隊ではチームの力を合わせることが文字通り死活問題になります。
危険と隣合わせの環境で組織目標を確実に遂行することが各階層のリーダーに求められているため、士気を高める人心掌握は必須スキルと言えます。
軍隊式のリーダーシップに触れたことのない人は意外に感じるかもしれませんが、フォロワーシップを醸成する人格的特性として「品格」が明確なテーマになっています。
品格を生み出す資質として、自己規律が確立していることや情動・感情面で成熟していること、高ストレス下における身体的な強さを重視している点が特徴的です。
具体的な行動面では、率先して模範を示すことや部下に対する傾聴などが組織を調和させる方法として挙げられています。
また、軍隊とは別の分野でも、ヘンリー=ミンツバーグが著書「マネジャーの実像」でNGOや病院などを含む多様な組織のマネジメントを研究し、「情緒面の安定」を優れたマネジャーの人格特性として指摘しています。
ミンツバーグは、リーダーによる一方通行のリーダーシップではなく、メンバー全員参加型のコミュニティシップを重視しており、人間的成熟度をその成功要因としてとらえています。
「自己確信」の重要性
フォロワーがついていきたくなる資質として品格を重要視する見方があるわけですが、なかでも特徴的な知的特性に「自己確信」(self-confidence)があります。
これは、不確実で変化する状況の中で意思決定に自信を持ち、チームに明確な方向性を示す力を指しています。
自己確信を持つ人は、周囲から見て「ついて行きたい」という感情を引き起こします。
環境変化を前提とするリーダーシップ論ならではの独特な価値観といえます。
この自己確信を獲得するには、無数の断片情報を総合して、的確な状況判断を下すことが前提となります。
しかも、飛び交う情報は、ときに誤っていることさえあるため、信頼性の評価もリアルタイムに下す必要があります。
戦地の状況を想像すれば分かるように、外界に直接さらされてつねに危険を意識しなくてはならない組織のメンバーは心情的な不安を引き起こします。
ミンツバーグもこのようなマネージャーを「ザル型マネジャー」に分類し、部下の狂乱状態という症状を指摘しています。
メンバーから見て**「頼りになる」という感情は、じつは外界に対する総合的な状況判断**に支えられています。
リーダーの自己確信は環境変化の先取りを一手に引き受けることで、チームに安心感と信頼感を醸成する源泉となっているのです。
見通しの悪い環境ほど「正しいことを行う」必要性が高い
リーダーシップが関心を集め続けて来たのは、現実問題として組織が環境の変化に適応することが難しい、という事実があるからでしょう。
ある目標に向けて組織が走っているときその活動には慣性が働いています。
組織が大きくなるほど慣性は強くなり、重要な環境の変化を認識したり方角を切り替えたりすることにはより大きな力が必要となります。
組織を牽引するリーダーシップに求められるのは、なすべきことの決定、つまり「何を行い、何を行わないか?」に答えを出せる能力でした。
一見、これは平凡で簡単な問いのように思えますが、背景を知ることで定義を理解しやすくなります。
リーダーシップの必然性は分野によって異なります。
より厳しい競争環境に置かれた組織のトップほどリーダーシップの必要性が高いと言えます。
最もリーダーシップが強く求められる分野は、やはり企業の取締役やCEOなどのトップマネジメント層です。また、少し変わったところでは、米国陸軍の例でも方向性を明確に示すことの重要性が強調されています。
これらの分野では、正しい方向の選択こそ組織が生き残るための必須条件であると強く意識されています。
逆に、リーダーシップに異論を唱える代表例として、著名な経営学者のミンツバーグが挙げられます。ミンツバーグは『マネジャーの実像』で、ビジョンだけを振りかざして実行力を伴わないリーダーの危険性を指摘しています。
ミンツバーグがリーダーシップに懐疑的なのは、調査対象の幅広さと関係がありそうです。企業だけでなく、政府機関・医療機関・NPOといった多彩な組織や、ミドルマネージャー、現場マネージャーをターゲットに含んでおり、競争力が課題にならない組織ではリーダーシップの重要性が低いことがうかがえます。
つまり、正解があらかじめ見通せない状況下では、そもそも組織が目指すべき方向を決めることが難しく、その解決能力として、なすべきことを決めるリーダーシップの重要性が高まると言えます。
リーダーとしてのスキルアップ法
リーダーシップを強化して、惰性を打ち破る力を身につけることは可能なのでしょうか?
多くの研究者はリーダーシップをスキルと見ており、経験を積むことで強化していけると考えています。
かつては、リーダーシップを生まれ持った素質とみる特性論が研究されていたこともありましたが、現在ではあまり注目されてはいません。
『リーダーシップの旅』(野田智義/金井壽宏著)では、“リード・ザ・セルフ”から旅は始まる、と説明しています。
リーダーシップを強化する経験を積むには、必ずしも部下やチームを持つ必要があるわけではなく、実は個人レベルの活動の中にもリーダーシップを強化するような行動があります。
特定の行動習性の積み重ねによって、いざチームを牽引する局面で差がつくと考えられます。
正しいことを見いだす思考経験
結論的にいえば、意思決定の経験がリーダーシップを鍛える重要な要素となります。
意思決定は個人の活動に関するものであっても有効な経験となりますが、どのような決定でも良いわけではなく“質”の面では条件がつきます。
単にAとBの候補からどちらかを選択するというだけでは不足なのです。
リーダーシップの要点は、「何をなすべきか?」に答えを出すことです。
リーダーは、組織の力を活用して結果を出すことを求められます。そのために組織の進むべき正しい道を見いだし、メンバーの活動を束ねていきます。
誰が考えても同じような結論になるような決定では、メンバーが積極的につき従っていく動機が生まれません。
結論を出すにあたり、
複雑で見通しが悪い状況であるほど良い経験を積むことができます。
不確定性・複雑性・トレードオフ
リーダーシップが求められる実戦の環境では、クリアな選択肢が候補に現れることはまずありません。
「見えないものを見出す力」とも言われるとおり、メンバーには見通せていないような選択肢の中から正しいことを決めていかなくてはなりません。
外部環境には不確実性があり、チャンスとリスクが同居しています。「こうなるだろう」と思ったとしても実際には別の要因によって違う結末になることも多々ありますし、そもそも好都合な要素は不都合な要素とセットになっています。
たとえば収益性の高い製品に特化することで利益は増えるかもしれませんが、それによってこれまで定着していた顧客が離れてしまうかもしれません。
また組織を前提とする以上、内部要因にも複雑性を伴います。あらゆる施策にはメリットとデメリットがつきまとい、満場一致で決められることばかりというわけにはいきません。
必ず何らかの制約がつくトレードオフの関係となります。
つまり、リーダーシップのコアとなる「何をすべきかを決める」という行動は、つねに複雑な前提を考慮に入れたうえで、何を捨てるべきかも同時に決める必要があるのです。
企業のリーダーである経営者は、「実行した結果えられるメリット」「実行することで捨てるものの大きさ」「成功するために達成しなくてはいけないこと」「失敗したときに起こること」「実行しなかった場合の見通し」をつねに同時に考えているものです。
なるべく多くの要素を考慮に入れて意思決定する経験が重要なのは、このように現実の状況が無数の要因が絡み合う複雑系になっているからです。
多くの人が途中で考えることをやめてしまうような場面でも考え続けて、自分なりの答えを出す経験こそ成長に必要な要素なのです。
次世代リーダーの確保が難しい理由
次世代のリーダーほど必要性が強く認識されながらも確保が難しい資源はありません。
多くの企業や組織は、長期間にわたって存続することが期待されているため、人材の新陳代謝は組織運営にはつきものと言えます。
現状の運営に大きな問題のない企業にも、将来、社長を始めとするトップマネジメントが降板する日に向けた準備が整っていないケースは多々あります。
表面的な運営に問題がないのは、企業の成長につれて業務プロセスが標準化・定型化されるため、日々の業務に関するマネジメント人材やプレーヤー人材に不足が生じることがあまりないからです。
問題は、将来の幹部層となるべきリーダー人材の不足です。
次世代リーダーの確保が難しいのは、リーダー特有の才能と経験が求められるからです。
GEをはじめとする数々の有力企業で経営コンサルタントをつとめたラム=チャランは「CEOを育てる」で次世代リーダーの選抜と育成の重要性を説いています。
まず選抜の観点では、リーダーに適する人材は若くして商才に優れ、また人を見る眼に優れた人材であることが必要と主張します。
ラム=チャランの表現によれば「CEO細胞」を持つリーダー適性の高い人材を見極めることがまず第一のハードルとなります。
また、最終的に経営幹部層を務めるリーダーになるためには経験も求められます。
一般的なリーダーシップ論でも議論されているとおり、変わりゆく環境の中でタイムリーに意思決定を実行していくことがリーダー固有の役割となります。
不確実性が高く限られた情報の中でメリットとデメリットのトレードオフを判断する能力を身につけるため、段階的に損益責任の範囲を広げていくようなキャリアパスを積むことが理想とラム=チャランは主張します。
異質なキャリアパスが次世代リーダーを生み出す
このように才能と経験の両面で、次世代リーダーのキャリアパスはプレーヤーからマネジメントに昇進させていく一般的な職務階層と根本的に異なっていることから、後継者の確保は多くの企業にとって難題となっているのです。
GEやP&Gなど、リーダーの発掘と育成に焦点を当ててCEO創出のパイプラインを敷設している一部企業だけがリーダーの継続性を確保しています。
次世代リーダーの問題は、トップマネジメントが長期的に取り組むべき課題であるとともに、経営者を目指す人材にとっても早期から独特の経験を意識しておくべきテーマと言えます。
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