役員が転職を考える ――
これは本人にとっても企業側にとっても大きな出来事。
一般社員の転職のように気軽にできることでもなく、転職先でのポストも当然それなりに高くなるため受入先企業も限られ、必然的に比較的レアなケースと言えます。
でも実はベンチャー企業や中小企業では、役員クラス・エグゼクティブクラスの人材でも転職が頭をよぎることは間々あること。
ここでは、ベンチャー企業・中小企業の役員が転職を考える理由やその背景にある会社の性質と、役員が実際に転職活動を行う上でのポイントを解説します。
目次
2-1. ワンマン社長の鶴の一声は意外と正しかったりする
2-2. 会社役員としての自分の手腕を見誤るな
2-3. 大手企業の役員とは性質もレベルも違う
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1.ベンチャー・中小企業の役員が転職を考える理由
1-1. ベンチャー・中小企業の「ワンマン経営」という特性
ベンチャー・中小企業規模の会社においてよく見られる現象として、役員が役員としての役職を与えられつつも実際に経営方針や事業方針を決定するのは社長である、というワンマン経営です。
「取締役」などのポジションにあるわけですから取締役会を構成する一員ではあり、理論上は会社の重要事項を決定するにあたっての議決権を持ってはいますが、取締役会が実際には開かれない、あるいは開かれたとしても社長が決めたことを役員全員が確認する程度で、異議を述べることはせず、「決議事項を可決した」という内容の議事録を残すのみ、という会社がほとんどだったりします。
自分が「経営幹部」でありながら実質的には経営を動かすことができない、そのジレンマに対する不満が蓄積して転職を考えることもあるでしょう。
しかし、ここまではベンチャー・中小企業に役員として籍を置く以上はおそらく本人もわかっていたこと。
最も大きな転職の動機付けとなり得る問題は他にあります。
1-2. 会社の成長とともに社長との方向性のずれが生じる
創業社長やオーナー社長とともに長きに亘って会社の成長を支え、見守ってきたナンバーツーやナンバースリーの役員が脱退する ―― 時々見受けられるこの事象の一番の原因は社長との意見や方向性の違いが生じることによるものです。
役員には当然のことながら会社の企業理念や経営方針、事業方針への深い共感性が求められますが、ベンチャー・中小企業ではこれが社長の鶴の一声で決まります。創業当初に社長が掲げた大きな夢や目標も、会社が成長していく段階で社長が大きく舵を切り、方向性が変わることもあるのです。
例えば、事業を拡大する過程で新たに展開したビジネスが想定以上に好調となり、経営軸がそちらへ流れていく。あるいは社長が外部から採用した幹部の存在をきっかけに会社の方向性が変わっていく。古株の役員が反発しても社長が「俺はこうしたいんだ」と譲らない。
あるいは逆に役員側が事業拡大のため新たな挑戦を志しても、社長が軸足をぶらすことを嫌い、頑として動かない・・・。
会社も事業も生き物で、社会と時代の流れでいかようにも変わり発展していくものですから、このような場合にワンマン社長と役員のどちらが正しいとは一概には言えないものです。
ただ、上の例のように抱く理念や方向性の違いが大きくなってくると、ワンマン経営の会社においては役員側だけではいかんともしがたいのが実状。そうなると社長との間で物別れとなり、役員が会社を離れる結果になりがちなのです。
2.転職活動で留意すべきポイント
さて、ここからは、このように会社を離れる決意をした、または離れることを具体的に考え始めている中小・ベンチャー企業の役員特有の陥りがちな罠と気を付けるべきポイントについてお話しします。
2-1. ワンマン社長の鶴の一声は意外と正しかったりする
まず大前提としてですが、ワンマン社長というものは強い意志と自分の中の理念をもって会社を育てているだけあって、経営手腕に優れているものです。
また、上辺のビジネスがどう動こうと、本当の根底にある社長の考えは意外とぶれていない場合が多く、社長自身はそこに従って判断を下していたりもします。
社長の鶴の一声に反発を覚えることは多々あれど、結局振り返ってみるとあの判断は正しかったんだなあ、と思えることもあるのではないでしょうか。
「自分の考える方向性が社長と違う」ときに、自分の意見を主張することはもちろん大事ですが、実質的に会社を導いてきた社長と自分のどちらに従うかとなると難しい問題です。
一度抱いた反発心をきっかけに社長に対する不満が増大し、今までなら従ったようなことも従えなくなる、とにかく社長は間違っている、とドツボにはまっていき、早まって転職を決意してしまう前に、方向性を慎重に見極める必要があります。
2-2. 会社役員としての自分の手腕を見誤るな
もちろん役員もビジネス観やセンスがある程度優れているからこそ役員のポジションを手に入れているわけで、必ずしも社長のそれと比べて劣っているということではないのですが、こうしたワンマン社長の下で役員を務めてきた人は特に注意すべき点があります。
ベンチャー・中小企業では実際の経営判断をしているのは全て社長で、役員はそれに賛同して追随しているだけ、という場合が多いのですが、その環境にすっかり染まってしまった役員はなぜか自分も会社を動かしているという錯覚に陥りがちです。
「自分は『役員』であり経営者の一員である」「会社は成長を続けている」=「自分は成功者である」といった思考回路で、自分の手腕を見誤るスパイラルにはまり“井の中の蛙”と化してしまうのでしょう。
ベンチャー・中小企業ではどんな動きも結局は社長の後ろ盾があってこそのものであり、社長がワンマンであるがゆえに、ビジネス上で失敗があっても社長のせいにできるというメリット(?)があるものです。
このような温床育ちの役員は、まず自分が温床育ちであることを自覚し、ビジネスにおける自分の行動を振り返ってみると良いでしょう。社長ではなく自分自身の判断で行ったことや、その判断が会社にもたらした影響など、自分の役員としてのジャッジを改めて把握し、社長のそれとの比較をしてみる良い機会かもしれません。
2-3. 大手企業の役員とは性質もレベルも違う
役員に限らず転職するときには誰しもが理解すべきこととして、自身の客観的なレベルの把握があります。
例えば、大手企業など大きな組織や、そこまでの大企業でなくとも組織運営がきちんと整備されている会社では、役員の果たすべき役割とその職務内容のレベルが大きく異なる場合があります。つまり、同じ役員クラスであっても、会社の規模や性質によって求められるものが違うのです。
前述のとおり、ベンチャー・中小企業の中でも創業社長・オーナー社長のいる会社では役員に重要な経営判断が求められることはあまりなく、その職務内容も大手企業でいえば部長クラスと同水準であることも珍しくありません。
レベル感や経営体質の異なる会社への転職を考えるのであれば、そのあたりを一応頭に入れておきましょう。
※ 大手企業と中小企業・ベンチャー企業の管理職はここまで違う
3.人材紹介会社の転職エージェントを活用しよう
一般的に役員クラスの転職では、ヘッドハンターや知人からの引き抜きを受けるパターンと、自ら転職先を探索して活動をするパターンがあります。
前者の場合は本人にかかる労力も少なく、比較的良い条件での転職が叶うことが多いためそれが可能であればラッキーですが、誰もがそのような機会に恵まれるわけではありません。
そこで、自ら転職活動を行う場合には、人材紹介会社の転職エージェントを活用することを強くおすすめします。
エグゼクティブクラスの転職に特化した求人情報サイトや、会員登録制でスカウト中心のサイトなど、今は様々なサービスがありますが、主に応募者側目線での企業選び、企業側目線での候補者選びなど、個人と企業いずれかの一方的な取捨選択となるこれらの手法ではマッチング効率が必然的に下がってしまいます。
中でも役員クラス・ハイクラスの転職ではマッチングが命であり、そのポジションゆえの影響の大きさから失敗は許されません。
そこで役に立つのが人材紹介会社の転職エージェントです。
転職エージェントは企業側と応募者側双方の情報を持ち、それぞれのニーズを把握した判断に基づいて採用マッチングを行うプロであり、それを生業としているだけあって安心して任せられます。
なお、人材紹介会社にも得意とする分野がそれぞれありますので、ハイクラス・エグゼクティブ転職を専門に取り扱っている会社を選ぶとよいでしょう。
4.まとめ
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