コンサルタントがつねに直面するキャリア上の課題に「ポストコンサルタントの転職」があります。
一部の日系コンサルティング企業をのぞくと、コンサルティング・ファームはおおむね”Up or Out型”の組織形態をとっているため、年次が進むにつれ窮屈感は強まる傾向があります。
また、ファーム内の昇進では、より営業スキルの求められるアカウント・マネージャーの性格が強くなることから、人によっては職種上のフィット感にズレを感じるケースも出てきます。
コンサルタントにとって、ポストコンサルタント転職はつねに先手を打っておくべき問題なのです。
案件がらみの”青い鳥”指向が多くの失敗の元凶
ポストコンサル転職の素朴な形態は、”職場内結婚”にも似ています。
プロジェクトの活躍が顧客に認められ、あるタイミングでポジションの必要性が出てきたときに移籍する、というシナリオです。
多くのコンサルタントが、このような機会を潜在的に期待しています。
ただ、この職場結婚型転職は、機会が著しく制約されるという欠点があります。
コンサルファームを利用する企業は大手企業が中心となりますが、大手の日系企業は要職を生え抜きのライン人材で組織する傾向が強く、現実的にはあまりチャンスがありません。
結果的に、このかたちの転職は、外資企業のマネージャー職が主流となります。
ただ、よく知られているとおり外資企業は”成り行きしだい”という面があり、アメリカ流の猟官制で日本法人社長が変わった途端に、話が変わってしまうようなことがよく起こります。
また、近年では日本市場のシュリンクに伴う組織面の先細り感も構造的な不安として残ります。日本法人を縮小してアジア・パシフィック直轄の体制に切り替わる傾向はすでに散見されます。
ポストコンサル転職の率直な期待のひとつに「キャリア面で少し落ち着きたい」という点がありますが、外資企業ではこのような潜在ニーズを満たしづらく失敗しがちというのが実情と言えます。
また、そもそもこの形で事業会社に移ったとして、それが望むかたちとほど遠いということも起こります。
身近な線の転職となると、たとえばコンサルタント時代のインダストリー色が選択肢の基調となるため「自分は製薬業界にたずさわりたかったのだろうか?」という迷いが残りがちです。
このような種々のコンサルタント特有の問題があり、現実には「転職を先送りする」という展開になってしまっている例を多く見かけます。
当然の話ですが、コンサルタントに限らず転職は能動的に活動しない限り解くことができないのです。
転職にともなう不確実性もコンサルタントに限らない一般的な話です。
ポストコンサルの観点から見たキャリアアップとは?
ポストコンサルの観点でキャリアを考えるとき、多くのコンサルタントの感覚からいえば「事業会社への転職は早ければ早いほど良い」と言えます。
また、ポストコンサル転職の失敗の一番のパターンは「年齢の要件がどうしても満たせない。もう少し早く動いていれば…」というものです。
これは端的にいえば、「手がけてきた案件数は多くの事業会社にとって興味がない」から評価対象にならないためです。同様に大手ファームを複数社経験、というロジックも残念ながら通用しづらい面が強いと言えます。
ドライな見方をすると、プロジェクトの完遂にたずさわり、進行・アウトプットの方法論と思考体力を証明できるキャリアを積んだ段階でコンサルタントとしての積み上げは終了です。
インダストリーに関する知見が深まる方向性もあるにはありますが、企業経営者の視点では「そういうことではない」という印象になりますし、具体的な求人事情から考えるとその業種のニーズがなかったらそれで終わりになってしまうため、キャリア戦略上、あまり有効な考え方とは言えません。
事業会社の採用では、問題解決スキルよりも人物・人格面のポータブルスキルの方が重視されるため、コンサルタント然とした認識態度やコミュニケーションで固まってしまうとむしろ通過しづらい要因となります。
このような理由によって、ポストコンサルの観点から見ると、コンサルタントとしてのキャリアアップは意外と早期に頭打ちを迎えるため、30歳前後の若いうちに事業会社に飛び込むことが基本線となります。
エグゼクティブ案件を扱うエージェントの活用が欠かせない
ポストコンサルの転職ルートとしてもっとも有力なのは、専門性をもつ転職エージェントを活用することです。
じつはコンサルタント出身者の採用ニーズは比較的強いのですが、要職ほど転職サイトには掲載されていない非公開求人になっています。
非公開であるだけに、その存在があまり知られておらず、冒頭のような職場結婚型に陥りがちなのです。
また、それぞれの人材紹介会社には得意分野があり、ポストコンサル案件に強みを持つのはエグゼクティブ・ハイクラス求人を取り扱う企業です。
コンサルtoコンサルの転職に強いエージェントと、ポストコンサルに強い企業はまったく別である、という点には注意が必要です。
それは、クライアント企業と方法論(評価ポイントと選考の進め方)がまったく異なるからです。
スターリーグのハイクラス転職サービス「Star転職+」の実例でいえば、日系企業の社長の右腕のポジションや、プライベートエクイティ・VCの投資案件立上げに伴う経営企画室長案件、ベンチャー幹部の組成、事業開発マネージャー職、など公募はしていないものの要件を満たす人には機会の門戸が開かれている案件が比較的多くあります。
またコンサルタントは、面接で「何が得意ですか?」と聞かれると打ち出しが弱いという共通の悩みがあり、自分を売り込んでいく形式よりも必要とされる役職に応じる流れの方がスムーズに機会をつかみやすい面もあります。