管理職に必要な能力・スキル・資質とは│転職前にあなたの適性を簡単チェック!

もうそろそろ管理職のポストが見えてきた方、いつかは管理職を目指したい方、今まさに管理職に就いている中で悩みを抱えている方・・・。

「どんな人が管理職に向いている?」
「どんな人がマネージャーとして評価されて更に昇格できる?」
改めて考えてみるとフワッとした曖昧なイメージしか浮かばない方も多いのではないでしょうか。

管理職に求められる能力や資質は、きちんと言語化して表現することができます。
本記事を通じて、現在の自分が管理職に向いているのか向いていないのか、どんなスキルを身につければ管理職としての成果を出すことができるのかなどを考えてみましょう。

1.まずは管理職の役割と仕事内容を理解しよう

1-1. 管理職の役割は「組織に成果を上げさせるための道具・機能」

詳しくは 「【管理職とは】管理職の役割と仕事内容│課長・部長の責任と権限」 でも解説していますが、管理職の最大かつ最重要な仕事はずばり「マネジメント」です。
マネジメント論で著名なピーター・ドラッカー氏はマネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具・機能」と定義していますが、この定義づけは非常に普遍的かつ本質を捉えています。課長、部長、役員(経営陣)と、役職に応じてマネジメントの対象となる組織が「課」「部」「会社全体」と異なるものの、それぞれがそのポジションに応じて管掌する組織に成果を上げさせるために動く役割を担っているのです。

それでは、本質的には「同じ」ことを仕事内容としている課長、部長、役員(経営陣)それぞれに求められる能力や資質も「同じ」でしょうか。

1-2. 課長、部長、役員はそれぞれ違う「マネジメント」を求められる

答えはもちろん「否」です。
課長になれるけど部長にはなれない、部長にはなれるけど経営陣までは上り詰められない・・・
そんな人たちが実際に存在するのも、 「課長」「部長」「役員」でそれぞれ求められる資質が違う からです。

会社の規模や業種・業態によってもかなりの差があるため一概には言えないものの、会社という組織の運営上、ほとんどの会社において経営理念や方針・経営戦略などの大きな枠組みがまず存在し、それらに沿った事業戦略や利益目標が各部門で立てられ、それを更に細分化された「課」や「チーム」などの組織に対して目標が課せられるという流れがあります。それぞれの段階で役員(経営陣)から部長、そして課長へと役割が下りていく仕組みになっており、そこにはトップマネジメントからチームの取りまとめレベルまで、上限関係に伴うはっきりとした役割の違いがあるのです。

例えば、課長のマネジメントは**「部下育成」と「目標達成」**が中心。
会社全体の経営方針や戦略、事業部ごとの利益目標などを受けて、「課」にはそれらに沿った目標が課せられます。課長は自身の受け持つ「課」という組織がその課せられた目標を達成するためにメンバーをどう動かすか、どう動いてほしいかを考えながら必要な教育・指導を行い、自らも第一線で営業活動などの実務を行うのが通常です。

※部下にうつ病の兆候が見られたら 「部下がうつ病になった時の兆候と正しい対応」 が参考になります。

では部長はどうかと言うと、 複数の課を取りまとめつつ他部門との連携を図り、会社に対して部としての責任を果たす 必要があります。
部としての目標を達成する責務はありますが、それは各課長に対する指揮・監督を通じて行うため、部長が「部下の育成」に直接携わることはありません。個別の案件に関わることも減り、お客様の中でもかなり重要なお客様、中でも重要な案件にしか関わらなくなります。また、経営陣の策定した戦略・方針に従い、部として会社の事業活動にどのように貢献するかなど、組織長として課長よりもう一段高い視点から見て判断・戦略の立案を行う必要があると言えます。

最後に役員は「経営陣」という別名が使われるように、まさに 「会社経営」に携わる立場 です。
一人ひとりの社員に目を向ける機会は格段に減り、会社全体、ひいては業界全体、社会全体で起きる物事を俯瞰して見る「トップマネジメント」が仕事になります。
その上で、中長期的な目線で会社の業績と動向を考えて経営戦略を練っていくのです。

2.ずばり、管理職に向いている人の特徴はこれだ!

さて、ここまでで役職ごとに務める役割も異なることはわかりましたね。
マネジメントスキル・マネジメント能力がある人を「管理職に向いている人」と表現することも多いですが、「マネジメント能力」というのも定義が画一的ではなく、役職に応じて求められるものが違うのです。
では、ここからはそれぞれのポジションで求められる資質・能力についてより具体的に見ていきましょう。

※ 以下の内容は役職ごとに区分して書いていますが、特定の資質について別記している場合を除き、それぞれの役職に「特に」求められる資質を示しており、課長に求められるスキルが部長には不要ということではありません。

2-1. 課長クラスの管理職に求められる資質・能力

① 傾聴力
**「聴く力」**を指します。課長は管理職の中で最も部下の指導・育成に従事する時間及びそのための労力を割かなければならない立場にあるため、部下とのコミュニケーションの中で相手の本心や考えていることを把握する力、視覚と聴覚と心を使って、相手の話に意識を集中させて聴く力が求められます。

② マルチタスク(分散注意力)
マルチタスクとは本来的な意味合いにおいては複数の業務を同時並行に進めていくことを指しますが、実務におけるマルチタスクは分散注意力に通ずる部分が大きく、この「分散注意力」がマネージャーに求められる資質としてはかなり重要になります。一般社員は担当業務が決められていて基本的にはその担当業務をこなすことが仕事ですが、マネージャーは違います。自分の仕事もありつつ広く部下のことを見ていかなければならないので、何かひとつのことをしながら別の情報も同時に目にしたり耳にしたりしつつ、得られた情報と自分の仕事を関連付けて頭を整理することが求められるのです。

③ 段取力
課長は、自部門に課せられた目標を達成するために、自分の部下である課員に対しそれぞれの能力やスキルをうまく引き出し導きつつ、目標までの進捗率を伸ばしていくべく効率的に仕事の配分を行う必要があります。よって、ゴール設定から逆算したマイルストーンの設定や先を見越した動き、その為の仕事とヒトの配分等、段取りを作る力が必要とされます。

④ チームワーク
課長には、自分のチームである課を取りまとめてひとつの方向性に向かわせる役割があります。チームで成果を出す為の意識と行動をリーダーとして自ら実践するとともに課員にも浸透させ、実行させる力が必要になります。

2-2. 部長クラスの管理職に求められる資質・能力

① 見通す力
部長には、事業計画や経営方針を踏まえた自部門の目標設定やその後の進捗管理など、時勢と会社の状況、自部門の状況などを見据えた的確な判断が要所要所で求められるため、様々な状況下で周囲で起こっている物事の本質を把握し、冷静に対処する力が必要です。

② 立ち向かう力
会社の組織上、部長には「問題が起きたとき」または「問題が起きそうなとき」に相談やお伺いが来る傾向にあります。通常業務は課長までで完結することが多く、部長まで上がってくるということは課長の段階で解決できないことを意味するのです。よって、部長には困難な状況下でも降りかかってきた負荷を直視して対処する力が求められます。

③ 実行力(巻き込む力と説得力)
部長は、経営層とのやり取りを通じて得た情報や自部門に割り当てられた役割などのうち必要なことを、課長をはじめとして自身の配下にある部や課、及びその構成員に下す責務も担います。また、他の部門との連携に伴うやり取りも多々発生します。したがって、物事を進める際の具体的なメッセージの提示や、それを伝える力、交渉力や存在感を通じて一つの方向に組織を動かす力が必要だといえます。

なお、部長クラスになると個々の案件や従業員と接することもほぼなくなり、実務にも携わりません。より高い視点で物事を認識し見極めることが仕事になってくるため、課長時代には必要とされていた「傾聴力」や「段取力」については必要性が薄まることになります。

部長クラス例

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2-3. 役員クラス以上の管理職に求められる資質・能力

① 決断力・判断力
役員になると、部長以上に現場とのかかわりは薄まり、個別の案件に関わるジャッジよりも格段に重要な「経営判断」を下すことが主な仕事になります。そのため、明確な活動指針を持って覚悟をもった決断を下すことができることと、予測のつかない未来の出来事に対し、ぶれない軸と覚悟をもって的確に決め動く力が必要です。

以上、役職ごとに特に求められる能力について説明しましたが、総じて言えるのはマネージャー・管理職には「管理能力」が必要だということ。自己管理のみならず、他人・部門全体を管理する力が求められるため、「仕事がデキる(=一担当者としての業務能力が高い)」ことがマネージャーとしても仕事ができることに直結はしないのです。
むしろ、一担当者として仕事ができる人は、その業績による名誉を手放したくないこともあり、管理職の仕事よりも担当者の仕事の方が面白いと感じていることもあり、管理職になりたがらない傾向があります。
営業担当などによくみられるのですが、プレイヤーとしての営業成績が高ければ高いほど社内ごとには興味を持てず、管理職になってからも管理能力を身につけようとしない場合があるのです。
そのような人に管理職としての適性を身につけるよう促すことも、管理職の大事な役割だったりします。

役員クラス例

4.マネジメントスキルは後天的に身につけることもできる

ここまで読んでいただいて、自分にはどんな適性が備わっているか、もしくはどんな適性が足りないかがある程度把握できたかと思います。
ただ、ここで注意いただきたいのは、「自分の現在のポジションと現在の適性が合致していること」が現時点における理想的な状態であるということ。

極端に言えば、ある営業担当者が受検した結果、役員クラス以上に求められる適性が高い状態だったとしても「やった!俺役員になれるじゃん!」ということではなく、その時点ではもしかすると営業担当者に求められる資質を欠いているのかもしれません。
例えば主任・係長クラスまで行けばその段階でマネジメント能力を見初められるということもなくはないですが、プレイヤーとしての成果・成績が上がっていない人を会社が昇格させる動きを取ることはなかなかありませんし、プレイングマネージャーがわりと一般的になってきている世の中において、マネージャーとしての責務を果たしつつもプレイヤーとしての成果も出す、ということを評価軸としている会社もあります。
同様に、課長として評価が高くなければ部長になるのは難しいものです。

「マネジメント」という仕事は、各ポジションにおけるスキルを積み立てながら徐々に移り変わっていくもの――― つまり、マネジメントスキルは後天的に身につけることができるとも言えます。
役員が生まれながらにして役員だったわけではなく、彼らも担当者、主任、課長(代理)、部長、と段階を経て成長してきたのです。

管理職の中でも、当然ながら受け持つ組織によって業務範囲も違えば業務知識として求められるものも違うので、自分の今の職務と役割を考え、
 ・今必要なのは何か
 ・次の段階に行くために必要なものは何か

を正確に見極め、スキルを身につけるために必要な努力と研鑽をすることです。

5.まとめ

以上のように、管理職・マネージャーとして求められる能力や資質、スキルには様々なものがあります。
役職が徐々に上がるにつれ、求められるものも増えていきますし、その難易度も上がっていきます。難しく責任の重い仕事でもあるからこそ、給料・報酬などの待遇面でも恵まれているのです。
これから管理職になることや管理職としてのランクを上げていくことを考えるのであれば、もともとの適性に甘えることなく常に自身のスキルアップ、視点を引き上げることに取り組むことが肝要だと言えます。

なお、管理職のあり方は大手企業と中小企業では大きく異なります。
自身の適性を考え、大手から中小、中小から大手への管理職・マネージャー転職をすることも良い転機につながることがあるので、いろいろな要素を複合的に考えてみると良いでしょう。

大手企業と中小企業の違いについて詳しくは ここまで違う!大手企業と中小企業・ベンチャー企業の管理職 をご覧ください。

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