年収1000万プレーヤーへの転職(3) 技術職編

昇進に必要な3つの能力

技術職のマネージャーは、昇進するにつれ分野はより幅広くなり、仕事内容もエンジニアリングじたいの割合がどんどん減っていきます。

年収1000万クラスの技術マネージャーともなると、チームワークで開発を進める役割をもっているため、自分は手を動かして開発をすることはほぼない、というのが実情です。

技術職のキャリアは、多くの人が持っているイメージどおり、現場エンジニアからスタートします。ソフトウェア分野であればプログラマーやテスター、ハードウェア分野であれば周辺パーツの設計・テストなどといった業務を担当しています。

多くのエンジニアは特定の技術に興味をもち、より専門化して深く高度な技術を身に付けたいという傾向がありますが、年収を向上するにはむしろゼネラリストになりリーダーシップを磨くことの方が重要です。

年収1000万プレーヤーに必要な能力は、①設計力、②マーケティング力、③プロマネ力の3点です。

1. 花形プレーヤーは設計力が命

技術職の実務トップのポジションは、企業の主力製品を開発する責任者です。

みずから開発を手がける機会こそ減りますが、技術力の高さも重要です。

チームを監督するなかで、自分が理解できないブラックボックスの部分があっては危険ですから、製品開発に必要な技術知識を幅広く身に付けていることが必須になります。

また、最終的に技術職にとってもっとも重要な技術力は”設計力”、とくにパーツを組み合わせた際の製品全体をデザインする力が命と言えます。

製品全体の設計には、多数の制約があります。

とくに重要なのは非機能要件と言われる、性能や壊れにくさ、さらにソフトウェア分野ではセキュリティなどの目に見えにくい部分の信頼性の確保と言えます。

これらの仕様に欠陥があったり、パーツのバラつきなどに余裕を見込んで作れていなかったりすると、販売後のトラブルにつながり、直接的な顧客流出のリスクのほか、営業部門やサポート部門などが対応に追われるなど、業績が傾く危険があります。

大手メーカーなどでは、生産工場のトップを経て社長にまで昇進するキャリアパスもありますが、これはより絶対的な品質を重視する経営方針と言えます。

このように、年収1000万エンジニアの使命のひとつに「品質を守る」という役目があります。

2. 製品マーケティング責任者としてデザインをとりまとめる

また、製品開発責任者は「売れる」ことも目指す必要があります。どんなに優れた商品であっても、売れなければ開発費・人件費の分だけ赤字になってしまいます。部下の給与を守るためにも、売れるモノ作りにこだわらなくてはならないのです。

そのために、プロダクト・マーケティング分野の能力が求められます。市場で求められている機能のうち、どの機能要件を重視するかによって、設計仕様が大幅に変わってきます。

機能とコスト、品質、生産スピードのトレードオフに加えて、競合他社の動向も考慮に入れて市場投入のタイミングも決定しなくてはなりません。差別化の要素を採り入れなければ価格競争に陥り、極端なケースでは市場ごとなくなってしまう可能性すらあります。

また、市場ニーズは1つにまとまっているわけではなく、ときには当たるかどうかも分からないような潜在ニーズをつく戦略も求められます。どのような顧客セグメントを重視するのか?、さらには数年後の市場の有望性と技術開発投資の選択も重要になります。これは、ミニ経営者としての役割と言えます。

なお、メーカーの業界事情については、 年収1000万プレーヤーの実像(5) メーカー編 で解説しています。

3. プロジェクト・マネジメント力も必要

1000万級のエンジニアに求められる重要能力の3点目として、折衝力・プロマネ力にもとづく実行力があげられます。

付加価値の高い製品ほど、大規模な開発プロジェクトが必要になるため、エンジニア組織の運営能力がマネージャーの実行力になります。

プロジェクトには予想しなかった困難がつきものですから、チーム間で相互依存するタスク進捗を把握し、適切に危機を切り抜けることが必要です。とくにシステムエンジニアの場合は、卓越したプロマネ力が欠かせません(ITの事情については、 年収1000万プレーヤーの実像(7) IT・ソフトウェア業界編 を参照してください)。

また製品責任者ともなれば、販売部門やサポート部門との密接な連携も重要なポイントになります。営業部隊が理解できないため、うまく拡販できない商品になってしまっては元も子もありません。

このように、部門横断的な関係者をとりまとめることはエンジニアリングの範囲を超えていますが、マネージャーとしては折衝力も基礎スキルのうち、ということになります。

チームワークをコントロールするプレーヤーになるためには、せまく特化した技術開発よりもリーダーとしての現場経験の方が成長にとって重要と言えます。

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