転職面接で、過去職歴を含めて退職理由は必ず聞かれます。
ほとんどの場合、履歴書を眺めながら面接を行うため、在籍していた会社の働きぶりとそこからの転職理由は交互に話す流れとなります。
退職理由で伝えるべきことは、前職をやめる理由とともに、次の仕事に何を期待したのか、という意思や考え方が重要です。
面接官は退職理由から、物事に対する判断軸や性格、興味関心、ストレス耐性など、採用上のヒントを得ています。
退職理由にはほぼ100%ネガティブな要素が背景に含まれるため、退職理由の伝え方に悩む方は多くいます。
このような人は、退職理由として決定的にやめざるを得ない事件を探してしまいがちですが、ポイントは「転職>転職しない」となるような合理的なストーリーがあるかどうかです。
「無理にやめる必要はないのですが、やりたいことがあるのでやめるのです」という宣言も良い退職理由となります(ただし具体性は重要)。
※ 面接対策まとめは「 【元人事責任者が教えます!】転職面接対策―質問・回答集から学ぶ極意― 」へ
世間に出回る退職理由にまつわる嘘
退職理由に関する情報を検索した時によくみるアドバイスとして、「ネガティブな転職理由をポジティブな転職理由に言いかえよう」というものがあります。採用の仕事に携わってきた身としてはよくもまあこんなアドバイスができるなと思いますが、結論から言えば全くの嘘です。そしてもっとも落とす理由でありがちなのがこの「退職理由で嘘をつく、もしくは転職理由を隠す」であることも付け添えておきましょう。
転職を考えたことがある人であれば誰でも理解できると思いますが、「退職」には本記事の冒頭で触れている通り必ずネガティブな要素が付きまといます。そしてその典型的なものが
- 上司や同僚といった社内の人間関係
- 残業や休日出勤など働く時間や会社で求められる働き方
- 給与や残業代、昇給などお金に関すること
の三つでしょう。
もちろん上司がやっている仕事内容や、将来自分に与えられそうな裁量権を考えたときに現時点と比較をした時の発展性のなさに愕然として転職を考え始めるといった方や今後のキャリアアップを考えて転職を考え始めたという方もいらっしゃいますが絶対数としては少ないと思います。
退職のネガティブな理由を隠さず伝えることが唯一の正攻法
人間関係・働き方・お金といった退職に直結しがちな理由でなくとも退職にはネガティブな理由が含まれることを多くの採用担当者は知っています。つまりあなたが伝える退職理由にネガティブな情報がなかったときには一気に「怪しい!」「何か隠しているのではないか?」とアンテナが立ちます。このような場合、経験から言えば一つ、二つ掘り下げた質問をしていくと応募者の転職理由のロジックが崩壊し、嘘をついていることが露見して不採用に直行していくケースが大半です。
採用はあくまでもあなたと会社が合うか、合わないかを判断するものであり、嘘や隠し事をすると例え採用の場でばれなかったとしても入社後必ず歪みを生み出し結果お互いの不幸につながります。
つまりネガティブな理由をきちんと隠さず伝えることが面接においては唯一の正攻法であり、入社してからの活躍や働きやすさにもつながる最も重要な真実もあるのです。
ちなみにこれは余談ではありますが年間に100人を超える応募者と面接をしているような採用担当者であれば応募者の嘘は見抜ける、もしくは感じ取ることができます。
応募者のちょっとした目線の動きやわざと沈黙を作った時の様子、身振り手振りの大きさの変化といったノンバーバルコミュニケーションと丁寧に質問を掘り下げることとのセットで大抵のことはお見通しであることは知っておくと良いと思います。
退職理由の伝え方 3つのコツ
さて、退職のネガティブな理由を伝えることが退職理由に関して聞かれた時の唯一の正攻法であることはお伝えしましたがもちろん伝え方の良し悪しはあります。 転職における面接は全体の印象形成をどのように良くするかが肝であることは他の記事でもお伝えしてきていますが退職理由を答える際にも良い印象形成につながる伝え方のコツがあります。 それは
- 人のせい、環境のせいにした、文句ばかりの回答をしない
- 退職を考え始めてから決断するまでに改善をしようと努力したことを伝える
- 数字を使ってリアリティを出す
ということです。
例えば
非常に業務量が多く、残業続きの毎日の中、頑張って仕事をしてきました。しかしどれだけ頑張り続けても、会社も上司も理解をしてくれないと感じ、転職を決意しました。 という転職理由の人がいたとします。
この人の転職理由が
転職を考え始めたのは半年ほど前からです。1年ほど前から非常に業務が多く朝7時から夜0時過ぎまで仕事を続けてきました。●●により業務効率化を図ることで労働環境を改善しようとしたほか、上司や会社にも人員の増強が必要な理由を伝えた上で増員をお願いしましたが回答もなく半年間先延ばしされ続けてきたため、この度転職を決意いたしました。
という感じだったらいかがでしょうか? 根本の理由は「残業続きの労働環境に耐えきれなかったから」というネガティブなものですが後者の答えであれば、逆に苦しい状況下でもそれなりの期間努力ができて、逆境に立ち向かっていく姿勢もある人材という評価につながる可能性もあります。 伝え方一つでこれだけ印象も変わってきますのでぜひ自分自身の退職理由を振り返って、良い印象形成ができる退職理由になっているかどうか確認してみてください。
自分の退職理由に納得感があるかを事前に知る方法
退職理由は正直に話しをした時に、その理由が確かに退職に至る致し方ないもので納得感があるものであるかどうかが非常に重要です。
ここまで退職理由の答え方のコツをお伝えしてきましたが、それでもまだ不安な方はぜひ他社に勤めている友人(できればズバッと意見を言ってくれる少し辛口な友人の方が良いでしょう)や転職エージェントなど比較対象の情報を持っている人に話してみましょう。客観的な立ち位置からあなたの退職理由がどのように聞こえるか率直なフィードバックをもらうことで採用担当者がどのように感じるかシュミレーションをすることができます。
納得感は自分だけでは計ることができないため周囲の力を借りることがあなたの退職理由が面接において通用するものかどうかを事前に知れる数少ない手段になります。
採用担当者が退職理由を聞いたときに一番よくありがちな落とす理由といえば「その程度のことで退職を決めてしまうのか・・・」「もう少し頑張ればいいのに・・・」というネガティブなことにたいする我慢強さのギャップから「うちの会社でもすぐにやめてしまうかもな」というものです。
あなた自身の退職理由が一般的に見て「致し方無いな」と思われるものなのかどうかをできる限り客観的な視点から知っておくことも重要なことだと心に留めておいていただければと思います。
転職理由のみならず、転職の面接における全般的なアドバイスとして 【元人事責任者が教えます!】転職面接対策―質問・回答集から学ぶ極意― もご活用いただくことで面接対策も万全になりますのでぜひ参考にしてみてください。