管理職の役割「部下を育てる」を叶えるための発想転換法

管理職の役割は、企業ごと・部署などの組織ごとに個別性の高いものからどこでもおおよそ共通のものまで様々ですが、課長や部長などの管理職ポストに就いた場合にほぼ間違いなく経験するのが部下の育成というミッション。
これは数ある管理職の役割の中でも重要性が高く、同時に最も難しいタスクのひとつとも言えます。

そもそも、**「部下を育てる」**とは具体的にどんなことか理解していない管理職もいます。
仕事の仕方を教え込むこと。管理して、指導すること。
熱く檄を飛ばして盛り立てること。
どれも完全に間違いではないのですが、一番大事なのはそこではありません。

本記事では、間違いだらけの部下育成に陥らないための、目からウロコの発想転換法をご紹介します。

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目次

2-1. どんな行動にも理屈と信念を持つこと、日頃から刷り込むこと
2-2. 自ら考えて動ける部下を育てるティーチングとコーチングの使い分け
2-3. 自部門の成果をあげながら、部下に成功体験を積ませること
2-4. 部下に見せている背中を常に意識すること

  • 3.職場にはびこるダメなマネジメントを打破しよう
  • 4.まとめ

  • 1.基本の考え方:管理職は部下が評価されてナンボ

    管理職も人間です。自分も評価されたいし、部下に負けることは悔しい。
    だから、
    ・自分には思いつかなかった斬新なアイディアを部下が提案してきた ――
    ・自分ではなく部下が大きな契約をまとめてきた ――
    ・自分の作成した資料のミスを部下に指摘された ――
    こんなとき、管理職の心境はとても複雑ですよね。

    結果、気づけば部下の成果をこっそり自分のものにしたり、自分のミスを部下の知らないところでは「部下がやった」と責任転嫁したり・・・。

    でも、このように部下の成果を盗み、ミスは部下のせいにすることで自分こそが成果を上げているように見せることは部下の信頼を損ねるばかりか、自分の評価を上げるにしても一時しのぎにしかなりません。
    一瞬自分が良い思いをしたとしても、その後についてくるのは「あの部署はマネージャー以外は成果が上がっていない」「あいつの下では部下が育たない」という、管理職としては致命的な評価です。

    なぜなら、管理職の役割は本来「部下の育成」、これに尽きるからです。
    管理職は、部下が評価されてこそナンボの世界。
    「手柄は部下に、責任は自分に」とはよく言われるように、むしろ部下に花を持たせることで自分の成功につながるのは事実です。

    実践するのは意外と難しいものですが、自分の部下が褒められるのは管理職にとっては最大の名誉。
    真っ赤な嘘はもちろんいけませんが、部下の成果をアピールし、部下が周囲からの高評価を得られるようにうまく仕向けることも管理職として必要な立ち回り方です。
    課長・部長である自分が少し手助けをして部下が何かを成し遂げた場合でも、「部下が一人でやり切った!」と言い切るくらいの心意気を持つことで自分のマネージャーとしての評価も自分の意識も高まります。

    2.部下から好かれることと、尊敬され信頼されることは違う

    さて、管理職として上司や社長からの評価を得るための考え方は以上のとおりですが、もうひとつ、管理職としての評価に大きな影響を及ぼすものがあります。
    それは、部下からの信望。

    信望とはつまり、部下から尊敬され信頼されること ―― これが叶わなければ部下の育成などうまくいくはずがありません。
    ただし、注意しなければならないのは、これが「部下から好かれること」とは全く別の話ということ。好かれる上司になることを意識してしまうと、嫌われることを恐れるあまりに本来必要な厳しさやけじめを徹底できず、優れた上司にはなれません。

    「好きではないけど、仕事上は尊敬してるし絶対的に信頼できる」
    部下からこんな評価をされる上司は実はよくいます。
    もちろん、結果として部下から好かれる超優秀なマネージャーもいますが、その上司はまず間違いなく好かれることを第一の目的としてはいないはずです。

    ここからは尊敬され信頼される上司になるためのコツをお伝えしましょう。

    4-1. 人事部門の管理職=組織を見通し、整える力

    理不尽な上司は信頼されることはありません。
    これは間違いなく普遍的な事実です。

    でも、一度下した判断をひっくり返したり、以前指示した内容を180度変更したりすることは、ビジネス上マネージャーとしてどうしても必要なことがありますよね。
    しかも、まさにこんな事象を部下は「理不尽だ」と感じます。
    では、どうすればいいのか。

    それは、どんな行動にも理屈と信念を持つことと、それを日頃から部下にも刷り込むことです。
    例えば、リクルートの創始者である故・江副浩正氏の言葉に「朝令暮改はいい。良い方向に変えるのだから」という趣旨のものがあります。
    初めて聞くと、めちゃくちゃにも聞こえます。
    でも江副氏はそれを言い続けることで自分の信念・方針として浸透させ、定着させました。極端な例ではありますが、自分の信念を持ち、それを自分の行動の原点として理屈づけることでブレない軸を作ることができた事例として参考にできます。

    そこで、まずは自分も曖昧な理屈での判断を下さないこと。
    常にしっかりとした信念に基づいてジャッジと指示をし、その理屈を部下にもしつこいくらいに伝え続けるのです。
    時間はかかるかもしれませんが、「ブレない」ことは必ずやいつかは信頼につながります。

    2-2. 自ら考えて動ける部下を育てるティーチングとコーチングの使い分け

    マネジメント研修などでは定番とも言えるお題ではありますが、これも「コーチング」こそが優れた指導法である、と思い違いをしている管理職がいるものです。

    部下を育てるにあたってはやはり、指示待ち・受け身の姿勢を脱皮させ、自ら考えて動くことができるように導くことが最終目的と言えます。
    そこで登場するのがコーチング。
     部下:「どうすればいいですか?」
     上司:「君はどうすればいいと思う?」あるいは「君はどうしたい?」
     部下:「私は×××××と思います」

    このようにあえて次のアクションを指示せず、部下の自律的な思考と行動を促す指導法です。
    確かに優れた指導法ではあるのですが、ひとつだけ欠点があります。それは、部下それぞれの知識やビジネススキルのレベルによって、圧倒的に向いていない部下が中にはいることです。

    自ら考える。これができるのは、その考えを組み立てられる程度には知見とスキルが備わっている場合だけで、そもそも考えるにあたっての材料が揃っていない部下にそれを求めてもいたずらに混乱させ、逆効果にもなりかねません。
    「自分で考えろ」と無茶振りしてもできないものはできないので、その場合はティーチングを織り交ぜることが必要です。いわば、材料を少しずつ渡していくイメージです。

    例えば、最も丁寧なティーチングとしては指示内容とその理由を全て伝えること。
    次の段階では、指示内容だけ伝え、その理由について考えさせてみること。
    そして更に次の段階では、考え方だけ伝え、すべき行動とその理由を考えさせてみること。
    このように、部下のレベルに合わせて様々な段階のティーチングとコーチングを使い分け、レベルアップさせていくことが必要なのです。
    それができることで部下は「この上司は自分のことをわかってくれている」と感じることができ、それが信頼につながります。

    2-3. 自部門の成果をあげながら、部下に成功体験を積ませること

    「××課長/部長の判断はいつも正しい」「言われることが理に適っている」
    部下からそう思われる状態になれば、それは尊敬につながります。

    そのためにも、それほど難しくないわりに効果が高く、是非実践していただきたい方法として、自部門の成果をあげながら部下に成功体験を積ませることがおすすめです。
    例えば「目標を達成すること」でも達成感は得られますが、大事なのはその数を重ねること。
    定期的に設定している中長期的な目標ではスパンが長すぎるので、日常業務に絡めて部下の実力をほんの少し超えるミッションを都度与え、ときには少し手助けをしながら成功体験を与えていくのが良いでしょう。

    成功体験が重なっていくことで部下本人に成長実感も得られ、プラスのスパイラルを生み出すこともできます。

    2-4. 部下に見せている背中を常に意識すること

    部下は、上司のことを意外なほどによく見ているものです。
    仕事であげている、もしくはあげていない成果からどこでどんな言動をしたかまで見られていること、そしてそれが部下同士のネットワークを介して伝播していくことで、それが正しいか正しくないかにかかわらず、自身の評価・評判が左右されてしまうことはよくあります。

    だから、上司としては部下と直接接するときの態度や言動はもちろんのこと、どんな背中を見せているかも常に意識しなければなりません。口先でうまいことを言っていても、背中は正直です。仕事をする上でのスタンスやマインドがそこから見えていることや部下にとっては自分が手本であることを改めて肝に銘じ、いつでも尊敬できる背中を見せたいものですね。

    3.職場にはびこるダメなマネジメントを打破しよう

    さて、ここまでにお話しした意識や行動は、良い組織・マネージャーが本気で部下を育てるマネジメントをしている組織では自然なこととして浸透しているものです。そして、仮にそこまで意識の高い組織でなかったとしても、管理職が自分ひとりでも始められる第一歩になり得ることばかりです。

    もしこの話がきれいごとだと思う方、実際には実現できない理想論だと思う方がいれば、それは、あなたの会社にダメなマネジメントが染みついてしまっているということかもしれません。
    前述のとおり、ひとりでも始められる行動ですのでやってみるのもひとつ。
    会社の体質がそうでなくても、後々も浸透しなくても、自分の部署だけでもある程度満足度・幸福度を上げることができるはずです。

    但し、マネージャーの資質や能力は企業それぞれの性質や方針に沿って次第に象られていきますので、組織として良くない体質に甘んじていると後々のキャリアにも響きます。
    自分ひとりの力で会社を変えることができないようであれば、より良いマネジメント経験を得るためにも転職することもひとつの選択肢とお考えください。

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    4.まとめ

    本記事では、管理職の本質的な役割について触れました。
    部下を育成することは一種子育てに似ていて、部下の成長は上司の喜びであるべき。
    それが本来の組織マネジメントの在り方で、より幸せな会社作りにも通ずるものです。
    本記事をきっかけに、一度自分の会社の現状を改めて振り返るきっかけになれば幸いです。

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