既卒の就職活動はなぜ不利なのか。
「既卒の就職活動は不利である」―― これは残念ながら事実です。
ではなぜ不利なのでしょうか。
既卒生の中には、
「社会人経験がなくビジネススキルがまだない点においては新卒と同じ」
「せっかく就職した会社をすぐに辞めてしまった第二新卒よりはマシ」
などという考えを持った人もいますが、これは大きな間違いです。
なぜなら、既卒は「新卒と第二新卒の中間」的な存在ではないからです。
以下、それぞれの特徴をわかりやすく比較してみましょう。
新卒は卒業直後に就業することを前提に学生生活の中で就職活動をする人、
第二新卒はかつて新卒として採用され、おおむね1年未満~4年未満程度の就業経験を経て新卒入社した会社を退職した(する)ため転職活動をする人です。
それに対し既卒は、
・新卒時代に就職活動をしていたが何らかの理由で内定をもらえなかった
・学生時代に就職活動をしておらず、そのまま卒業した
大多数が上記のいずれかに当てはまり、新卒入社を逃した人になります。
新卒は、新卒採用至上ともいえる日本独自の企業文化の中で優遇されますし、第二新卒は基本的なビジネスマナーや社会人としての常識は身についているものの思考が柔軟かつまだどこかの企業の色に染まっていない新鮮さがある点で別アングルから見て受け入れる企業も多いのですが、既卒はこのどちらにも当てはまりません。
企業側からすれば、**「就職活動をしていたのに内定が出なかったということは何か問題があるのでは」「就職活動をしなかったのは学生時代に目的意識を持たずただ漫然と過ごしていたからではないか」**と考え、敬遠することになるわけです。
なお、中にはもちろん、例えば家庭の事情などで新卒時の就職活動を中断せざるを得なかった人や、公務員試験受験のため勉強していたが思うような結果が出ず民間企業での就職に転換することにした人など、やむを得ない事情を抱える人もいますが、「既卒」としてスタートラインに立つ時点においては企業側としては同じ扱いになりますので覚悟は必要です。
ただし、の後の書類選考、既卒となった経緯に関する面接での受け答え内容等によって、後の結果には大きく差が出ます。学歴の違いも同様です。
既卒が就職のために準備すべきことは?
既卒の就職活動では、「どんな履歴書を使えばいいか」「面接にはどんな服装でいけばいいか」「履歴書の志望動機欄はどう書けばいいか」といった疑問を持つ方が多いようですが、気にすべきところはそんなことではありません。
必要なのは、既卒として就職活動をすることになった今、当時(学生時代)をどのように振り返って、どのような点を反省し、その反省点を今後どのように活かしていくかということを、漠然とではなく具体的に言葉に落とし込み、それを相手に伝えること。
そしてもうひとつ、不利な条件下でかなり「頑張る」必要があることを自覚することです。
ただ、なんでもいいから無作為に「頑張る」ということではありません。
この先、本気で就職してキャリアを積みたいと考えるのであれば、キャリア戦略を持って動くことが必要で、そのためには兎にも角にも実績を積むことが必須条件です。
既卒者を受け入れてくれる会社は、新卒や通常の中途と比べ、そう多くありません。
また、その多くが営業・販売職での募集となるのが現実です。
自分の理想より厳しい環境であっても、既卒者はまず実績を積むことを第一に考えましょう。
ただ、その中でも、その仕事で自分がどう貢献できるのか、また自身のキャリア戦略上、その仕事をどのように自分の糧とするのか、ということをきっちり筋道立てて描くことも大事です。
あとは下積みと思って最低でも3年から5年はその環境で頑張る努力が必要でしょう。
その上で初めて、周囲の転職者と同じ土俵に立って次へのステップアップができると考えてください。
既卒の転職活動失敗事例
ここで、既卒での就職活動の失敗事例をひとつ紹介したいと思います。
Aさんは既卒で就職活動をしていますが、そもそも既卒の応募を受け付けてくれる会社の中で自分の興味を引くものがなく困っていました。
待遇の良くない会社には行きたくないし、
自分のやりたくない仕事には就きたくない・・・。
特に業種を絞らずに会社名と入社後の待遇を基準に応募先を選んでいるAさんは、たまに「良さそう」と思った企業に応募してみますが全て落ちてしまいます。
それでも「そのうちなんとかなるだろう」と楽観的に構えているうちにどんどん月日が経ち、やがて生活費や遊ぶためのお金が足りなくなったAさんは、少しの間なら就職活動を中断しても大丈夫だろうと思い、1ヶ月限定の短期アルバイトをすることにしました。
その後、販売職のアルバイトを週5日、1ヶ月間やりきったAさんは達成感を得て、張り切って就職活動を再開しました。
「販売のアルバイトしてました!ものすごく忙しくて辛かったけど頑張りました!」
同じ販売職への応募だからとアルバイト経験を一生懸命アピールしますが、それでもやはり内定は出ません。
そんな時、高校時代の友人Bさんから久しぶりに誘いがあり、会うことになりました。
Bさんは新卒で就職し、最近研修を終えてOJTに移ったばかりでした。
先輩が厳しい話、仕事も忙しく上司とのやり取りにも苦労する話などを楽しげにする様子を見て、Aさんは**「昔からこいつより俺の方ができるのに…。俺はなんて運が悪いんだろう。俺を採用しない会社が悪いんだ。」**と気持ちがくすぶります。
結局Aさんはその後、やっととある企業から内定をもらい、入社しますが、仕事にも興味がない上に上司との折り合いが悪く、「こんな会社では頑張る気がしない」と3ヶ月で退職してしまいます。
以後、Aさんはアルバイトや短期の派遣などで生活を繋ぐようになり、就職活動はますますうまくいかなくなります。
さて、果たしてAさんは「運が悪いだけ」でしょうか?
以下の点はAさんの欠点を挙げたものですが、新卒での就職活動に失敗した結果、既卒となった人にありがちなパターンでもあります。注意しましょう。
・応募する会社を選ぶ基準があいまい
(キャリアビジョンがない、またはあってもそれに沿った会社を選べていない)
・就職活動に本気で専念していない、独断のみで就職活動をしている
・企業研究をしていない(販売職をひとくくりにする安直な考えなど)
・他責傾向(うまくいかないことを自分ではなく周囲の人や環境のせいにする傾向)
営業という武器を身につける
改めて厳しいことをいいますが、既卒は採用する側の企業から見れば魅力を感じにくい存在です。スタートラインの時点でハンデを背負っているわけですから、そんな中で勝ちあがっていくには自分に何らかの付加価値をつけていくしかありません。